石の話
変成マンガン鉱床中の
紅砒ニッケル鉱と
ゲルスドルフ鉱
標本を整理していたところ,15年くらい前にサンプリングしたパックに入れたままの石が出てきました.ラベルに「紅砒ニッケル鉱とゲルスドルフ鉱」と書いていました.標本にすべきか,迷っていましたがひとまず掃除してみました.粗粒のばら輝石―テフロ橄欖石からなる低品位マンガン鉱中の,ばら輝石中に粒状で入っているようでした.
掃除後にルーペで観察しているとゲルスドルフ鉱用の鋼灰色金属光沢の粒がいくつか見られました.ゲルスフドルフ鉱は銀白色―鋼灰色で自形は八面体や六八面体などになり,劈開のあるNiAsSなる組成の鉱物です.
標本中に鋼灰色金属光沢で劈開のある粒はいくつかありましたが,そのなかにゲルスドルフ鉱の粒の中心に紅砒ニッケル鉱が入っている粒がありました.
産地:京都府木津川市加茂町法花寺野(非売品).中央が紅砒ニッケル鉱で周囲がゲルスドルフ鉱.周囲のピンク色は半自形結晶のばら輝石.白色部は半自形結晶の空隙を充たす角閃石類.橙色の粒は満礬石榴石.
さらに拡大した写真です.粒の大きさは左右で約0.5㎜でした.紅砒ニッケル鉱は黄銅色っぽく映っていますが,肉眼ではもっと赤色味が強く,光源の影響で黄色く映ってしまいました.
当地はすでに砕石はやめていて,そのあとに資材置き場になったそうですが,行った人も周りにはおらず,どうなっているかはわかりません.すでに過去の産地となってしまいました.今回はサンプルを成形して掃除したうえで顕微鏡撮影をしました.撮影した画像を掲載しました.