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鉱物の顕微鏡写真103 -アレガニー石―

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鉱物の顕微鏡写真103

―アレガニー石―

産地:Franklin mine, Franklin mining district, Sussex county,

       New Jesey,USA.(非売品)

 

Alleghanyite  アレガニー石

[組成] Mn5[OH|SiO4]2  

[結晶] 単斜晶系.板状や柱状結晶になる.多く粒状や塊状.国産では外形のはっきりしたものは稀で,今のところ結晶は未報告.

[色] 淡桃色・灰桃色・赤桃色・赤紫色・赤褐色・赤橙色・黄白色・帯黄灰桃色.

[光沢] ガラス光沢~油脂光沢.

[モース硬度] 5~5.5

[比重] 3.93~4.02

[劈開] {001}に良好.実際に観察できるような粒はあまりない.

[条痕] 白色~淡桃色.

[同質異像鉱物] リッベ石(Ribbeite)

ほか,酸に可溶しゼラチン状の物質を残す.

 

 

 つぎはアレガニー石にしました.炭マンを産するマンガン鉱山で,普通に産する鉱物の一つです.高品位そうなマンガン鉱があると大抵は入っていて,ばら輝石や菱マンガン鉱とは異なる,独特の光沢と赤紫色系統の色が目を引く鉱物です.菱マンガン鉱と共存することが多いようで,単独の集合になると色が濃くなる傾向にありそうだ.低変成度から高変成度のマンガン鉱床まで広く産するようなことが文献にあった.

 海外の標本を探したところ,上の標本しかありませんでした.Starling Hill の標本を探しましたが,手元に無く近接する,Franklin鉱山の標本を撮影しました.

 

 

 

 

 

上の標本の赤いところがアレガニー石.2枚目の写真にアレガニー石の劈開が観察できます.

黒色はフランクリン鉱.

黒色のフランクリン鉱の左横付近にある,やや紫色かがった青色部が灰マンガン橄欖石でした.それから無色なのか周囲の色が濃い所為かはわかりませんが,かなり大量の珪亜鉛鉱(Willemite)とハーディストン石(Hardystonite)を混入していて,下の写真のようによく蛍光しました.

短波紫外線灯下での撮影.黄緑色―緑色に蛍光しているのが珪亜鉛鉱(Willemite).青く蛍光しているのはハーディストン石(Hardystonite).赤い部分はマンガン方解石です.

 

 

以下は,国産の標本です.普通に産する鉱物なので,あまり標本にしていなかったらしく,丹波-美濃帯のマンガン鉱山の標本しか手元にありませんでした.

産地:岐阜県岐阜市奥 網代鉱山カケガ洞鉱床.(非売品)

 15年くらい前に訪問してサンプリングした標本です.褐桃色部がアレガニー石です.当地では同じような産状で多少見かけの異なる,同質異像鉱物のリッベ石も産していて,どっちがどっちかわからなくなりそうになります.白色の脈のようになっているのは菱マンガン鉱です.

 

産地:京都府亀岡市保津町水尾川西岸 保津鉱山.(非売品)

 14年くらい前の雪が降っているときに訪問した際にサンプリングした標本です.現場に行くには川を渡らないと行けない現場で,寒いのに靴を対岸に放り投げて素足で渡った思い出のある産地です.褐紫色の部分がアレガニー石です.よく似た組成の園石もありそうですが,当地では見ていません.また,非常に見かけが似た,よく似た組成のリューコフェニス石(Leucophanicite)が当地で見つかっていて,サンプルを購入しましたが,全く見分けがつきませんでした.中下部に斜めに切っている脈は菱マンガン鉱です.

 

産地:京都府船井郡京丹波町実勢 小屋ヶ谷鉱山(非売品).

 この標本も14年くらい前に訪問してサンプリングした標本です.割ったときに目の覚めるような赤紫色をしていたのですが,年月を経て多少くすんだような気がします.ほぼ全体がアレガニー石で,裏面に淡桃色の菱マンガン鉱や帯青灰色のテフロ橄欖石などを伴っていました.

 

産地:京都府南丹市美山町三埜 三埜鉱山(非売品).

 この標本は購入品です.目の覚めるような赤紫色が強い印象として残っています.赤紫色がアレガニー石で,周囲の淡紅色は菱マンガン鉱です.

 

産地:京都府相楽郡和束町門前 和束鉱山東鉱床(非売品).

 15年くらい前に訪問してサンプリングした標本です.三重・滋賀・京都の三府県の境界に近いところにあるマンガン鉱床で,尾根筋に通る林道より下って行って,再び登ってくるという逆登山をする羽目になりました.林道から分かれた沢の横に踏み跡があって,その横にちょっとした渓流瀑があって,それを越えるのに難儀した,坑口の横に3~5mくらいの斜瀑があったのを覚えています.

 鉱石はすべてが堅く,ほとんどが珪岩中に挟まるばら輝石でした.2~3を採集した覚えがあり,上の標本も含めてサンプリングしました.裏面は研磨の回で研磨面の顕微鏡写真を掲載しました.赤紫色がアレガニー石で,裏面に褐色の園石を伴っていました.

 

産地:京都府南丹市美山町向山 向山栗谷鉱山向山6号坑(非売品).

 橙色系統の色を呈するアレガニー石です.16年前にサンプリングした標本です.由良川南岸に聳える「後山」と呼ばれる山の南西に派生する尾根の突端近くにありました.尾根の中腹くらいにトロッコの軌道の跡が残っているですが,そこまで登る杣道がいくつかあって,どれも急斜面で難儀しました.やっとのことで到達すればあとは尾根を西に回り込んだ終点まで,だらだら歩くと終点の少し上に6号坑と8号坑がありました.上の標本は6号坑からのものです.標本全体に黒色のヤコブス鉱(幅約5㎜)が脈状で切っていて,高品位そうでした.こんな石を鉱石にしないなんて,と思っていたら端を欠かしたところ,黄鉄鉱の鉱染部が出てきました.硫黄分が多いので外したもののようです.上の写真で赤橙色から橙色の部分がアレガニー石です.淡桃色~桃白色系の色の部分は菱マンガン鉱です.この標本では,観察されにくい劈開が一部にみられました.

 

産地:滋賀県高島市朽木地子原 立戸鉱山(非売品).

 13年くらい前にサンプリングした標本です.川に面する坑口が対岸から見えるのですが,高さ20mくらいの岩の崖の中腹くらいにあるので,坑口を見に行ったことはありません.対岸に索道か何かで下ろしていたらしく,その付近に少し鉱石が見られました.黒色金属光沢のハウスマン鉱がパッチ状に入っていて,粒の粗いところもありました.当ブログで以前にも掲載したテフロ橄欖石の結晶?もこの石よりでました.この石の母岩は主に灰桃色のアレガニー石と黒色粒状・チョコレート色レンズ状のハウスマン鉱からなっていて,ハウスマン鉱の粒が荒い部分や,アレガニー石の粒の粗い部分が数点見られました.粗い部分は空隙だったらしく,白色の重晶石で埋められていました.当初は方解石が充填しているものだと思って,欠片を塩酸で炊いてみましたが,白色部は変化無く,周囲のアレガニー石が脱色されて,海綿のようになってしまいました.比重の大きいことと,劈開の光沢で重晶石と判断しました.空隙を充填している鉱物が重晶石なので,酸で溶かしだすことができず,粒の粗い集合を刻んでいたところ,上の石が出てきました.結晶こそは出ていませんが,粒状で劈開が観察できました.上の写真で左の方にある黒色部はハウスマン鉱.

 

 

 


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