いくつかの研磨した石220
広島県尾道市瀬戸田町林 土取場の硫砒鉄鉱からなる脈を一面研磨してみました.当地は各種銅の砒酸塩鉱物を産することで有名ですが,初成の鉱物を見たことがあまりなく,初成鉱物の入っている石を探していました.つい最近に入手した標本の真ん中を初成鉱物が切っているのが判り,二次鉱物を酸で掃除した上で成形し,脈の断面を出しました.そこからゆっくり研磨しました.
(研磨)母岩の珪化したグライゼン様の岩石が硬いことを前提に磨り始めました.やはりこの部分が硬いので,写真の上部だけ先に磨り始めて,金属鉱物が濃集している写真の下の方を後で磨り,高さを合わせました.それでも磨り残しがありましたが,脈が思った以上に薄く,全体が磨り上がるまでに磨りきれてしまいそうなので,途中で止めました.中砥ぎに軟らかい砥石で磨っていたのですが,光沢が出ず,硬いホルンフェルスで磨りました.
(以下,顕微鏡下での拡大です)
灰白色―白色半透明の部分は石英.白色で白濁しているようなところは粘土鉱物.粘土鉱物に黄色ないし黄土色・灰緑色に染まっているのはスコロド石?
そして銀白色金属光沢部は硫砒鉄鉱でした.成形の前に表面に生えていた鉱物は主に斜開銅鉱で淡緑色―白色皮膜状のオリーヴ銅鉱,アップルグリーンのイットリウムアガード石,白色の雲母を膠着したボソボソした褐鉄鉱の空隙にコルンウォール石など銅を主とした砒酸塩鉱物がありました.それの銅の起源が磨ったら出てくるのかと,期待しましたが黄銅鉱や斑銅鉱のような鉱物は見当たりませんでした.その代わりに銀白色の硫砒鉄鉱粒の間隙に輝銅鉱類のような鉱物が埋めていました.青色味が強い部分と弱い部分があり,一部にデュルレ鉱のような部分もありました.以前にも津山市の西部にある久米鉱山の輝銅鉱を購入しましたが,青色味と光沢が鈍いのが気になって,分析したところデュルレ鉱でした.輝銅鉱は粒が細かいので,分析にはかけられなさそうなので「輝銅鉱類」としておきます.また母岩に近いところにある石英脈に錫石を含んでいました.多少は赤色味を帯びた粒状をしていました.