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鉱物の顕微鏡写真94 ―自然銀―

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鉱物の顕微鏡写真94

―自 然 銀―

 

産地:Sabinas mine, San Martín-Sabinas district,San Martín,

       Sombrerete municipality,Zacatecas,Mexico.(非売品)

 

Native Silver  自然銀

[組成] Ag (副成分にAu,Sb,Hg)

[結晶] 立方晶系.自形は立方体.八面体.斜方十二面体.ほか毛状,樹枝状・苔状・箔状・髭状になる.

[色] 銀白色.ただちに空気中で酸化し,錆びると黒くなる.

[光沢] 金属光沢.

[モース硬度] 2.5~3

[比重] 10.49—10.5

[条痕] 銀白色.

ほか,硝酸に可溶.延性および展性に富む.

 

 

 

 次は自然銀にしました.自然金・自然銅とともに古くから利用されてきた重金属です.その沿革と歴史はそんなに詳しくないので割愛します.一般に銀を含む硫化物の集合から二次的にできる鉱物です.近くに元となった銀鉱物がある場合は無い場合があって,含銀斑銅鉱・含銀方鉛鉱があったり,珪孔雀石のような銅の二次鉱物の集合より直接挟まっていたりします.また表面に自然銀が無くても高品位の銀鉱石を,洗浄し風通しの良い場所に置いておくと,表面に滲み出るようにして髭銀が生えてきます.鉱石の品位にもよりますが,早くて2か月くらいで出てきました.

 

 上の標本は数年前に廉価で入手しました.母岩の斑銅鉱から外れたらしく,ペラペラした感じの石でした.産地はスカルン中の鉱脈鉱床で銀や銅を採掘していたようです.全体のガサガサした部分が自然銀で,青く錆びた感じの斑銅鉱が少し残っています.

 

産地:Alhambra mine,3.2km NE of Bullard Peak, Black Hawk district,

       Borro mountains, Grant county, New Mexico, USA.(非売品)

 

 こちらは顕微鏡下での撮影です.ニッケル鉱物などを含む炭酸塩岩中の樹枝状の自然銀です.黄色―黄白色に見えるのは苦灰石などの炭酸塩鉱物です.その中に帯桃真鍮色金属光沢の粒があり,ニッケルスクテルド鉱とのことです.産地はもともと銀山だったそうです.

 

産地:Bad Schlema, Aue-Bad Schlema, Erzgebirgskreis, Saxony,Germany.

(非売品)

 

 こちらも顕微鏡下での撮影です.自然砒(Native Arsenic)と一緒に出てくるという産状の標本です.髭状や苔状の自然銀が折り重なったようにできているように見えます.周りは自然砒ですが,すでに黒くなりました.またかなり細かいですが,紅銀鉱も入っていました.これも黒くなってどこについていたのかさえ分からなくなりました.

 

 

以下,国産の標本です.自然銀の標本を探したのですが,ほとんどが「輝銀鉱」のラベルで,自然銀は4点ほどしかありませんでした.

 

 

 

産地:兵庫県養父市大屋町明延鉱山.(非売品)

 

 顕微鏡下での拡大写真です.多金属鉱床で有名な明延鉱山の自然銀です.これより大きな箔状の自然銀が裏面についてはいるのですが,すでに錆びて真っ黒になっていました.まだ錆びていない部分を探していると上の写真の部分がありましたので撮影しました.母岩は斑銅鉱―黄銅鉱に少量の方鉛鉱と閃亜鉛鉱を含む石英脈で,青紫色に錆びた斑銅鉱の周りにできていました.

 

産地:兵庫県宍粟市一宮町倉床富土野 大身谷鉱山富盛鉱床(非売品)

 

 顕微鏡下での撮影です.前出の明延鉱山から南の尾根を一つ越えたところにある銀鉱山です.少量の金を含むのかあるいは伴っているのか,妙に黄色っぽい自然銀です.ほかにも大量についているのですが,全て錆びています.標本は乳白色でやや緻密な石英脈を切る,輝銀鉱―斑銅鉱―黄銅鉱―アージェントパイライト?などの硫化物の集合です.自然銀は輝銀鉱や斑銅鉱を含む集合付近の割れ目にできていました.

 

 

 

産地:兵庫県養父市大藪 養父鉱山(非売品)

 

 顕微鏡下での撮影です.ほとんど錆びていない自然銀です.母岩は珪化した凝灰岩質岩の礫を含む黒色頁岩風の岩石で,方鉛鉱や濃紅銀鉱・輝銀鉱などを黒色部に含んでいました.

 撮影するために表面を掃除していたところ,標本の背面に黒いブツブツがあって,拡大すると輝銀鉱でした.

輝銀鉱.顕微鏡下で撮影.

 

 

産地:兵庫県朝来市新井 新井鉱山(非売品)

 

 顕微鏡下での撮影.15年くらい前にサンプリングした自然銀です.黒色頁岩を細かい石英脈で切ったような見掛けの石で,当初は斑銅鉱のラベルを付けていました.のちにあまりにも不安定な標本でしたので成形したところ,自然銀が出てきて,ラベルに付け加えました.母岩は斑銅鉱のほか方鉛鉱や閃亜鉛鉱・黄銅鉱などを伴っていました.

 

産地:大分県杵築市山香町山浦 三井大高鉱山(非売品)

 

 顕微鏡下での撮影です.輝安鉱やミアジル鉱の産出で著名になった現場ですが,19年くらい前に訪問した際には,こういう石はほとんど無かったように思います.この標本は購入品です.濃紅銀鉱や輝銀鉱などの銀鉱物をふんだんに含む,小さい割に重く感じた石です.少量の金を含んでいるのか,黄色っぽい色をしています.周辺の黒色の針状は二次的にできた針銀鉱の結晶で,息を吹きかけたら飛んでしまうようくらい脆弱な結晶です.ほかに銀鉱物から離れた,やや緻密な石英脈中にミアジル鉱や輝安鉱を含んでいました.

 

 

 


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