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いくつかの研磨した石216

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いくつかの研磨した石216

研磨面.

 

未研磨面.

 

 京都府宮津市小田寺屋敷 元普甲道付近の角閃岩を一面研磨しました.河守・大江山超塩基性岩体と宮津花崗岩の接触部からもっとも遠いところを探していました.その辺にロジン岩や曹長岩でもあればしめたもので,いろいろな高圧鉱物が観察できると思っているのですが,なかなかそれに当たりません.上の石はその途上で見つけた角閃岩です.少し前の荒天で法面の上の方から滑り落ちてきたような転石で,道路の脇にありました.白色の灰礬石榴石の脈が母岩の角閃岩を切っています.その方向に割れやすく,切った面が観察できる破片は少なかった.小さな破片ですが切っているのを見つけて一面研磨しました.

 母岩は主に角閃石類や長石で構成されているのですが,肉眼で褐色の鉱物がふんだんに含まれているのが観察できました.褐色鉱物は大きく分けて2つあり,板状で光沢が強く近くにルチル?と思われる鉱物がいくつか伴っていました.もう一つはやや細長い輪郭で板状に近く,貫入双晶をしている部分もありました.前者はチタン石で,後者は何にあたるか今のところ不明です.

 現場近くの砂鉱から十字石が報告されているので,この鉱物かもしれません.

角閃岩の割れ目に青っぽい蛇紋石化した被膜を伴っています.後者の不明鉱物はこれを切るように浮き出た個体もありました.光沢は石榴石とベスブ石の中間くらいで,劈開がありました.ひとまず磨って顕微鏡観察することにしました.

 

(研磨)角閃石が多い上,多少分解しているように見えたため簡単に磨れてくれると思ったのですが,予想以上に新鮮なのか蛇紋石化した被膜の下は難儀しました.構成鉱物が確認できれば..と思っていましたので,ある程度磨ったところで,中磨りと仕上げをしました.仕上げは青砥を使用していたのですが,途中から結晶片岩の石英の多い部分を磨ったもので擦りつけると光沢が出てくれました.

 

(以下,顕微鏡下での観察です.)

白色の脈の拡大です.赤褐色―橙色のベスブ石を含んでいました.白色部は炭酸塩か沸石で,暗緑色部は角閃石類です.

 

こちらも白色脈の拡大です.茶褐色の粒を含んでいます.細かすぎて判別できませんでした.

 

脈の一部の拡大写真です.ベスブ石が入っていない部分です.黄緑色部は緑泥石類のようで,淡黄色―灰黄色で半透明のように見える部分が灰礬石榴石でした.脈の部分が一番硬いようで,磨っているときから石榴石が含まれているのはわかりました.白濁しているのは沸石か炭酸塩鉱物です.炭酸塩はあまりこの脈には含まれていないようですが,塩酸の処理で少量含まれていることが判りました.カルシウムに富む集合なのでトムソン沸石か中沸石あたりの鉱物になるんだろうと思います.

 

母岩の角閃岩に含まれる長石を拡大した写真です.褐色のチタン石が含まれていました.未研磨面を肉眼観察したときにはルチルのような鉱物を近くに伴っていたのですが,研磨面には該当する鉱物はたまたま入っていなかったようでした.

 

こちらは長石が溶けたようになっている部分の拡大です.どういう訳かある一定の部分に溶けたような長石の斑晶があって,内部に含まれていたチタン石が飛び出したように観察できました.周辺の白色長石は分解していないようで,溶けたようになっていた部分は長石ではなく,何か別の鉱物なのかもしれません.文献を漁ってみたのですが,そういう事象が記載された文献は手持ちの文献には見当たりませんでした.

 

こちらも溶けたようになった長石?の拡大写真です.灰黄色の部分と白濁したような部分があり,やはり長石ではないのかもしれません.

 

未研磨面での観察で,褐色の不明鉱物を確認しました.貫入双晶らしい結晶がありましたが,研磨面でもそれに近いものがありましたので撮ってみました.長板状のようで,貫入双晶のように見えるのですが,どうでしょうか.

 

 

 

 


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