鉱物の顕微鏡写真81
―ゴールドフィールド鉱―
産地:Mohawk mine, Goldfield, Goldfield mining district, Esmeralda county,
Nevada, USA. (非売品)
Goldfieldite ゴールドフィールド鉱(テルル四面銅鉱)
[組成]:(Cu10□2)[S|(TeS3)4] 立方晶系
[色]:帯青鋼灰色・鉛灰色~暗鉛灰色.錆びると黄色みを帯びてくる.
[光沢]:金属光沢.
[モース硬度]:3~3.5
[比重]:4.95~5
[劈開]:無し.
[条痕]:黒色.
ひと月ぶりの更新です.対象標本を改めて掃除した上で,顕微鏡撮影しているので,億劫でなかなか更新ができませんでした.
今回はゴールドフィールド鉱にしました.テルル四面銅鉱とも云いテルルを主成分の一つとしたやや珍しい鉱物です.上の標本は比較用に原産地に近い産地の標本を探していたところ,原産地のGoldfield mining districtに入っている鉱山の標本を買い求めることができました.熱水変質で珪化した母岩の空隙や,やや粘土化した部分に粒状で入っています.四面銅鉱の類なので,比較的はっきりした外形と,鋼灰色と金属光沢,劈開の有無などに拠って判別しやすい鉱物です.よく似た外観の閃亜鉛鉱や方鉛鉱を除外すると結構な量の粒が確認できました.
また裏面を一面研磨,してみました.
研磨面です.中央やや上の白色部は粘土鉱物です.褐色は酸化被膜.灰色は石英,乳白色はセリサイト化した部分です.ゴールドフィールド鉱は左下の黒っぽい部分です.
一部の空隙にゴールドフィールド鉱の結晶が入っていました(中央の鉛灰色部).白色は石英.鉄黒色部は閃亜鉛鉱.真鍮色部は黄鉄鉱.
こちらは黄鉄鉱と閃亜鉛鉱を含む部分の拡大です.黄鉄鉱(真鍮色)・鉄黒色(閃亜鉛鉱).ゴールドフィールド鉱は左上端の帯青鉛灰色に写って見える部分です.白色―灰色ガラス光沢部は石英.
中央の暗い鉛灰色部がゴールドフィールド鉱です.その上の比較的外形のはっきりしている灰色に見える粒は黄鉄鉱.中央よりやや右上の鉄黒色部は閃亜鉛鉱です.
こちらは研磨面の拡大です.中央より左側のやや青色味を帯びた鉛灰色部がゴールドフィールド鉱です.黄鉄鉱と共存しています.左のやや大きく見えるのは閃亜鉛鉱で,顕微鏡下で詳しく観察したところ,微細な方鉛鉱が入っていました.
黒色部は閃亜鉛鉱.帯黄真鍮色は黄鉄鉱.ゴールドフィールド鉱は右端に少し写っています.
ここからは国産の標本です.はじめに入手したのは九州鹿児島の入来鉱山の標本で20年くらい前に入手しました.矢印は振ってあったものの,どの部分か判らず,ラベルを付けた儘しばらく放置していました.その後に同地の別の標本を入手してそちらを手持ちの標本にしました.初めに入手した標本は,矢印が振ってあったものの母岩が大きく,成形も悪かった.後で入手した標本は付いている部分が大きく,75㎜×60㎜×20㎜サイズの箱に入る大きさでした.
産地:鹿児島県薩摩川内市入来町副田 入来鉱山(非売品)
この石も裏面を一面研磨しました.母岩が珪化しているため非常に硬いことを前提に磨り始めましたが,予想通り非常に硬く時間ばかりを要してしまいました.母岩自体は堅固でしたが磨っているうちに,粘土が挟まった部分から,パラパラ崩れていく難儀な母岩でした.でしたので目的の部分が磨り上がると,母岩の大部分を残して,磨るのを中止しました.仕上げは青砥で充分光沢がでました.
研磨面の拡大です.かなり微細な集合で,鉛灰色部がゴールドフィールド鉱が入っていると思われる部分です.帯黄真鍮色金属光沢は黄鉄鉱のようです.
別の部分の拡大です.こちらは黄鉄鉱や閃亜鉛鉱が主体の脈の様です.
10枚目の写真の上の方をさらに拡大したものです.下の方にゴールドフィールド鉱が濃集した部分がみられました.研磨する前に矢印で指示してあった部分です.顕微鏡を覗いていると写真中央より左上の方に馬糞金のような暗い集合が見つかりました.そこをかなり拡大して判別しようと試みましたが,小さすぎて判別できませんでした.
当地のゴールドフィールド鉱はヘムス鉱やシルヴァニア鉱などの金属鉱物が含まれているような文献がありますが,今回は判別できませんでした.
産地:静岡県下田市蓮台寺 河津鉱山猿喰坑(非売品).
のちに関東のコレクターと交換したところ,ゴールドフィールド鉱も入っていました.矢印が振ってあったところを拡大したのですが,錆びていてよく判りませんでした.中央よりやや右にそれらしい部分が入っています.帯黄真鍮色金属光沢部は黄鉄鉱.ほか黒色は閃亜鉛鉱のようです.
上の標本は切断面があり,こちらにも矢印や振ってありました.ヘムス鉱とのことですが,やはり小さすぎてよく判りませんでした.