2つのマンガン山にて
滝巡りに行く少し前に,2箇所のマンガン山に行っていました.
一つは大野ダム発電所の北側の尾根付近にあるN鉱山に行っていました.神社の裏に登る林道を辿って,獣除けのフェンスを開けて直進した次のカーブに坑口がありました.前々回に訪問した際にその上に二酸化の露天掘りの跡と,先人のハンマーの跡を確認しました.今回はそこまで登らずに府道沿いの小屋のところから右手に入る杣道を採りました.急な道で,すでに廃道化していて斜面との境界が曖昧になったところでマンガン鉱を幾つか拾いました.ほかにも二酸化マンガンが覆った石はありましたが,殆どチャートに着く貧弱なものでした.
上はその一つです.ピンク色はパイロクスマンガン石.赤褐色―茶褐色はヤコブス鉱を含む脈のようです.黒褐色は肉眼的にはハウスマン鉱の様でしたが,にわかに紫色を帯びていて,リッベ石やリューコフェニス石のようなヒューム石類が混入しているのかもしれません.
2つ目は知井中村の近くのD鉱山というマンガン山でした.2箇所の鉱体があって北側の鉱床は過去何度か訪問しましたが,南の鉱床は話に伺うだけで,位置が判りませんでした.今回,ようやく見つけることができました.
北側の鉱床の全景です.右の方の斜面に坑口が開いています.
2つ坑口があり.位置関係はこんな感じです.
下の坑口です.
上の坑口です.坑口というか露天掘りのような感じに見えました.この坑口の前に少量のズリが残っていて,熱水性の石英脈がかなりの量が含まれていました.二酸化マンガンの覆われたやや結晶質の石英で,まれに50㎜位の水晶がありました.ただし二酸化マンガンの覆われていてキレイなものではありませんでした.マンガン鉱物は菱マンガン鉱やアレガニー石からなる集合があり,今回も見つけることができました.
菱マンガン鉱―アレガニー石からなる集合.写真の上の方に灰緑色の粒があり,顕微鏡で観察したところ緑色を呈する重晶石でした.ほか黒い筋にヤコブス鉱が入っているようでした.
上の坑口のズリにある石英脈はずっと不毛の石英脈と思っていました.細かい汚い水晶があるくらいでしたが,今回1つですがほかの鉱物を見つけました.
殆どの石英脈は黒い二酸化マンガンに覆われていましたが,一部に鉄による黄色っぽい錆びを伴う石英脈があり,これを斫ると鉄マンガン重石が出てきました.
鉄マンガン重石.西にあった鐘打鉱山のものよりずいぶん赤っぽい気がしました.上は顕微鏡下で撮影したのですが,一応念のために母岩を短波紫外線灯を照射しました.おまけですが同じ石にホタル石が付いていました.
母岩の様子.
ホタル石は母岩の石英と見分けがつかない,無色のものでした.
確認のために暗室で短波紫外線灯を照射した上で,上の写真を撮りました.帯紫青色に蛍光している部分がホタル石です.
次に南の鉱床に行きました.北の鉱床よりわずかに60m位しか離れていませんでした.道の法面が続き,車の屋根位の高さのところに坑口があり,車で通った時は気付きませんでした.
南の鉱床の坑口.南西方向に向かって掘下っているようでした.
腕を精いっぱい挙げて背伸びして,フラッシュを焚いて撮影しました.掘下っているのかあまり奥までは光が届きませんでした.
坑口が道の横なので,こういうところは基本的に鉱石は少ない.鉱石が落ちていないか探し回りましたが,道の横にはありませんでした.坑口の下に少しあって,1つサンプリングしました.
炭マン.上の方の黒っぽいのは二酸化マンガンの酸化被膜では無く,黒色の珪岩です.ピンク色はパイロクスマンガン石.淡桃色―灰桃色はアレガニー石.左の方に縦に切る脈は準石墨(あるいは非晶質炭素物質)からなっていました.子の黒色の脈に切られている暗赤褐色の脈はヤコブス鉱が含まれているらしく,磁石が引き寄せられました.
産出鉱物は以下のようになりました.
(北鉱床):石墨(あるいは非晶質炭素物質)・黄鉄鉱・閃マンガン鉱・ホタル石・石英・二酸化マンガン鉱・ヤコブス鉱・鉄マンガン重石・菱マンガン鉱・テフロ橄欖石・アレガニー石・パイロクスマンガン石・氷長石.
(南鉱床)石墨(あるいは非晶質炭素物質)・黄鉄鉱・閃マンガン鉱・石英・ヤコブス鉱・二酸化マンガン鉱・菱マンガン鉱・重晶石・テフロ橄欖石・パイロクスマンガン石などでした.
(赤字)は石英脈からの産出です.
このあと滝巡りに移行しました.