いくつかの研磨した石190
京都府南丹市園部町埴生倉谷 円郷山鉱山の脈石を一面研磨しました.大谷鉱山のある行者山の南方から北西方向に伸びる断層沿いの小丘にあった鉱脈鉱床です.行者山の鉱化作用かどうかは不明ですが,硫砒鉄鉱や黄銅鉱などを含むグライゼン質の石英脈が,行者山南西より天引峠方面に向かって点々と見られました.この手の石英脈は天引峠で終わっていると思っていましたが,峠の更に西方にある福住鉱山にもあることが判りました.さらにその北西方にある筱見四十八滝の弁天滝の袂にある鉄と銅?の旧坑にもグライゼン様の石英脈を見,少量の硫砒鉄鉱と黄鉄鉱・黄銅鉱などがありました.行者山と天引峠との中間くらいに位置するのが円郷山鉱山です.
上の標本は高校生くらいの時にサンプリングしたものの一部です.最近になって20年以上前にサンプリングした石が出てきました.元ラベルに紫色ホタル石とありました.黄色の脈の表面に紫色のホタル石がついていました.
紫色部がホタル石.
標本の硫化鉄を含む部分は含水硫酸鉄のカビが一面に生えていて,母岩もかなり分解していました.とても標本になるようなモノではありませんでしたので,腐った部分をハンマーで抉り取って,新鮮そうな部分のみを一面研磨用にしました.
(研磨)白雲母を含むグライゼン様の脈を伴っていましたので,硬いのはホルンフェルス様の灰色の部分だけと予想して研磨し始めました.予想通り雲母の部分は簡単に磨りきれて,下から光沢の強い灰黄色部が出てきました.高い硬度と強い光沢でトパズだということがすぐわかりました.硫化鉱物の部分と雲母の軟らかいところが先に磨りきれて凹まないように,研磨しましたが後で見るとやはり,先に磨れて凹みになってしまいました.
仕上げははじめ青砥で磨っていたのですが,思ったより光沢が出ず,中途半端に風化したホルンフェルスで,時間をかけて磨ると光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
写真の上の方にある脈の周辺を撮影しました.
銀白色金属光沢部が硫砒鉄鉱です.
こちらも硫砒鉄鉱です.トパズはどこにいるのかというと蝋質感のある黄色は白雲母,硫砒鉄鉱の横にいるやや光沢の強い,俄かに黄色みを帯びた白色部がトパズでした.
盤際を撮影しました.三角形に反射しているのは硫砒鉄鉱の結晶でした.
こちらは標本の大部分を占める灰白色を呈するホルンフェルス様の母岩の拡大です.
あとから切ったと思われる白色の石英脈の周囲に,細かい硫化物が集合していました.
更に拡大.肉眼的に判別できる硫化鉱物は余りありませんでした.
後から切った石英脈から少し離れたところの母岩の拡大です.粘土を伴う細い割れ目の周辺に黄鉄鉱が集まっていました.傍にある黒色粒状は閃亜鉛鉱で,顕著な劈開が観察できました.閃亜鉛鉱に伴って微量の黄銅鉱も入っていました.
当地の産出鉱物は自然金(未だ標本を見たことが無い)・黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱(こちらも標本を見たことが無い)・硫砒鉄鉱・石英・ホタル石・褐鉄鉱・鉄マンガン重石・スコロド石・トパズ・緑柱石・白雲母・緑泥石など.