鉱物の顕微鏡写真71
―車骨鉱―
産地:Boldut mine, Cavnic, Maramures, Romania.(非売品)
Bournonite 車骨鉱
[組成]:PbCuSbS3 直方晶系
[色]:鋼灰色・鋼黒色・鉄黒色.内部は帯青銀白色.
[光沢]:金属光沢.
[結晶]結晶は短柱状ないし長板状.{110}面で繰り返し双晶し十字型や歯車状になる.
[モース硬度] 2.5~3
[比重]:5.80~5.83
[劈開]:{110},{001}にやや完全.{010}に不完全.
[条痕]:鉄黒色・鋼色.
[断口]:亜貝殻状.
ほか塩酸に不溶.
鉱物名はフランスの鉱物・結晶学者の
Count Jacques Louis de Bournon(1751-1825)に因む.
顕微鏡写真シリーズは約半月ぶりの更新となりました.研磨石シリーズよりも写真の処理と標本の選定に手間取って,なかなか更新できませんでした.中途半端に写真が溜まって,メモリーを圧迫しているような状況です.
今回は車骨鉱にしました.本邦では秩父鉱山で多産していますが,基本的に珍しい鉱物で,当方もあまりほかの産地の標本は所有していません.
鉛と銅とアンチモンと硫黄からなる鉱物で,これらの元素を含む鉱物から少し離れたところにポツンとできているという傾向のある鉱物です.過去一度だけ現場で見たことがあって,但馬の北方の金山跡で,クトナホル石―菱マンガン鉱からなる脈石中の空隙に短柱状をなす車骨鉱が一本だけ立っていました.
ほかに特筆するような鉱物は無く,少し離れた脈状で黄鉄鉱と硫砒鉄鉱が自形で入っているくらいでした.
はじめに挙げた写真の標本は,どこかで購入した標本ですが,当初は水晶と苦灰石のラベルがつけられていました.あとで,表面を掃除すると二次鉱物の中から立派な車骨鉱が出てきました.母岩は大きいですが,17㎜×13㎜の範囲にたくさんの車骨鉱が集合していました.
顕微鏡下での撮影.繰り返し双晶で特徴的な段差が確認できます.
顕微鏡でさらに拡大した写真です.
結晶の上部から撮影しました.黄銅色は黄銅鉱です.
この標本の母岩に方鉛鉱を伴っていてこれが錆びないように部分的に希塩酸を垂らして,表面の二次鉱物を採りました.ほかに黄銅鉱・鉄黒色の閃亜鉛鉱,黄鉄鉱などを伴っていました.
ほかの産地をいくつか.
産地:Yaogangxian mine, Yizhang couty, Hunan province, China.(非売品)
中国の金属鉱山から産した車骨鉱です.産地名は本来は漢字で書きたいのですが,統合漢字がでないので英語表記にしました.暗灰色の御世辞にもキレイとは言えないくすんだ水晶の根っこ付近についています.
顕微鏡で拡大.板状の集合体です.
こちらは標本内で一番大きな結晶です.繰り返し双晶を確認できましたが,表面に別の鉱物で覆っています.
この標本にはほかに硫砒鉄鉱の自形結晶や黄銅鉱などを伴っていました.
以下は,日本産の車骨鉱です.
産地:埼玉県秩父市大滝中津川 秩父鉱山大黒坑(非売品).顕微鏡でかなり拡大しています.
次は秩父鉱山の車骨鉱です.8年ほど前に関東のコレクターよりお土産として頂戴した標本です.こちらへ来るから何かお土産は要る?..なんて云われて,「秩父の車骨がほしい!!」って言ったところ,「あんなんほしいの!?」っと言われて来たのが上の標本です.75㎜×60㎜×20㎜の箱にピッタリサイズの標本で,菱マンガン鉱―クトナホル石系炭酸塩が一面に生えている表面に,ほかの金属鉱物を全く伴わず,2~3個の結晶がポツポツついているという感じでした.
別アングルからの拡大写真です.
繰り返し双晶の結晶の頭を拡大してみました.おしいことにちょっと欠けています.
こちらはほかの部分に付いていた結晶の拡大です.結晶面が先ほどよりシャープに写ってくれました.
正面から.
下の方に白く結晶しているのは水晶.
かなり小さいですが,十字に近い双晶を見つけました.水晶の先端についています.
でも表面から見るとあまり十字型になっていませんでした.
産地:愛媛県伊予郡砥部町弘法師 古宮鉱山(非売品).
四国のマンガン鉱床から産した車骨鉱です.母岩は菱マンガン鉱のようです.この標本は6年くらい前に同行のTT氏より頂戴した標本です.どれやねん!っていう石でした.帯青鉛灰色金属光沢部が車骨鉱です.
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