いくつかの研磨した石177
京都府京都市伏見区醍醐陀羅谷 三宝鉱山の炭マンを一面研磨しました.当地の標本は随分前に炭マン鉱石の中を石英脈が貫いたものを紹介しています.今回はヤコブス鉱などの縞を含む層状鉱石です.15年前の7月頃にサンプリングした標本で,60㎜×45㎜×20㎜の箱に入るサイズになっています.層理に並行に割った標本になっていて,標本の裏面が一面に,二酸化マンガンの酸化被膜に覆われていましたので,この面を研磨しました.層状のマンガン鉱石を切断研磨するときには層理に直角に切ると,層状の構造が判る標本になるのですが,この標本は厚みが無かったため,層理に並行に磨ることにしました.
(研磨)基本的に層状の炭マンなので軟らかいと踏んで,一気に磨り上げました.真ん中の黒色部は二酸化マンガンと思っていたのですが,深部まで来た時に過酸化水素で泡が出るか確認したところ全く泡は出ませんでした.割れた面を良く観察すると,光沢の鈍い黒色で貝殻状に割れていました.おそらく準石墨を呼ばれる非晶質の炭素物質だったのかもしれません.
基本的に柔らかい鉱物の集合なので仕上げのとき,いつも使用している黄色の砥石では光沢が出てくれませんでした.少し硬い青砥でも光沢が出ず,#3000のペーパーで磨るとなんとか納得のいく光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での拡大写真です.)
黒色部を拡大しました.右下の灰緑色部はテフロ橄欖石.
こちらも中央部付近に灰緑色のテフロ橄欖石を含んでいました.灰白色部は菱マンガン鉱.
灰白色の菱マンガン鉱を多く含んでいる部分の拡大写真です.黒色部はヤコブス鉱の濃集部です.
一枚目の中央やや左上の黒色部の拡大です.黒色部の中にある白色部は菱マンガン鉱でした.
灰緑色のテフロ橄欖石を伴う部分の拡大です.
こちらも灰緑色のテフロ橄欖石を伴う部分の拡大写真です.
黒色部の中央付近を写した写真です.内部にまで菱マンガン鉱とテフロ橄欖石を含んでいました.褐色部はネオトス石.
ヤコブス鉱の濃集した筋の拡大写真です.黒色っぽいですが,一部に赤っぽいところもあり,粒までは小さすぎて判別できませんでした.
ほか,端のほうにアレガニー石を伴っていました.横に接するようにテフロ橄欖石がいました.こちらの黒色部は二酸化マンガンの酸化被膜でした.
ごく微量ですが,顕微鏡で拡大して表面を観察していると緑色の重晶石が入っていました.この鉱床の近くに笠取の重晶石鉱床があるので,この現場に重晶石が入っているのはそれの関係かは判りませんが,妙に納得しました.
この鉱床では石墨(非晶質炭素物質)・黄鉄鉱・閃マンガン鉱・石英・ハウスマン鉱・ヤコブス鉱・バーネス鉱・横須賀石・菱マンガン鉱・重晶石・テフロ橄欖石・アレガニー石・ばら輝石・ネオトス石などがみられました.これのうちばら輝石の類はいまのところ筆者は確認できていません.