いくつかの研磨した石168
福井県大飯郡高浜町安土 若狭ニッケル鉱山の珪ニッケル鉱を一面研磨しました.上の標本は15年くらい前に,山の南側を露天掘りした跡でサンプル採取しました.標本の真ん中を異剥輝石斑糲岩がかなり分解してますが切っていました.ここが真ん中に来るように成形した上,一面研磨しました.
(研磨)風化し蛇紋岩になっていて周囲からポロポロと崩れていくような軟弱な石でしたので,剥がれる部分は無視して磨っていきました.磨っていくうちに剥がれる部分が多くなって行き,上の標本の大きさになりました.磨っていくと脈の部分が比較的しっかりしていて,硬度があるためここを頂点にして凸の形になりそうでしたので,先にここの脈の部分を重点的に磨って高さを調整しました.
母岩全体が軟らかいので比較的早く荒研ぎできました.仕上げは青砥でしました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
脈の部分を拡大しました.
脈の中央付近の拡大です.
母岩と脈の境界付近の拡大です.茶褐色の部分はもとは橄欖石だったようです.蛇紋石系の鉱物に変質しています.
母岩中に入っている鉱物の拡大です.黒い粒は当初は磁鉄鉱と思っていましたが,全く磁力が無くクロムスピネルのような鉱物かもしれません.黒色の中央部に小さな晶洞のようなものがあって三角形の輪郭が観察できました.左手にある銀白色は磁硫鉄鉱でした.
同じく母岩中に入っている鉱物の拡大です.銀白色は磁硫鉄鉱で,その真ん中にある赤銅色金属鉱物の鉱物が入っていました.小さすぎて判別できませんでした.ニッケルの鉱物かもしれません.
こちらは風化した異剥輝石斑糲岩脈中の硫化鉱物の集合した部分の拡大です.黄白色部は異剥輝石の分解したもの.暗緑色部は蛇紋石系の鉱物です.中央の硫化物の集合の部分が肉眼的な大きさで,この標本内で最も磁力がありました.大部分が磁硫鉄鉱のようです.ほかに細かい鋼灰色の粒や黄色の粒が入っていましたが小さすぎて判別できませんでした.ニッケルの鉱物も含んでいるかもしれません.
分解した異剥輝石の拡大です.こちらには肉眼で判別できるような金属鉱物は含まれていませんでした.
脈になっている部分の拡大です.風化した異剥輝石斑糲岩脈にこのような脈が幾つも走っていて,この写真はその中でも大きな脈を撮影しました.割れ目を充填したように蛇紋石系の鉱物が入っていました.
黄銅鉱です.研磨しているときに一部に毛状の孔雀石が下から出てきて,磨りあげると黄銅鉱が出てきました.ルーペで確認しても黄銅鉱でした.顕微鏡で拡大したのですが,思った以上に小さいようでうまく写ってくれませんでした.
この露天掘り跡は現在工場の敷地になっていて入ることができなくなっていました.かつては小さな銅の酸化帯が隅の方にあって自然銅や赤銅鉱などの二次鉱物を産しました.先月に近くまで来たので見に行くと,コンクリで壁が補強され完全に観察できなくなっていました.そのため古い標本を引っ張り出して,今回一面研磨しました.
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