いくつかの研磨した石165
京都府船井郡京丹波町(旧 瑞穂町)猪鼻深山 深山鉱山の菱マンガン鉱からなる低品位炭マンを一面研磨しました.上の標本は数年前の新春交流会でサンプル購入しました.暗黄褐色のチャート中にレンズ状をなす炭マンが入っているのが観察できる標本です.割れ目に生成した非晶質のネオトス石のような物質で割れていて,染みのように一面に入っていました.染みの少ない方を破面を観察できる面にして,裏側を一面研磨しました.
当地は元ラベルを参考にして探しに行きましたが,現場にたどり着けずに敗退しました.場所が判れば訪問したい現場です.
(研磨)塊状チャートを伴ってはいるが基本的に炭マンなので,柔らかいと踏んで一気に磨り上げようとしました.塊状チャートの部分が思った以上に硬く,あとから切っている石英脈もあり,またピンク色の菱マンガン鉱と思っていた部分がパイロクスマンガン石だったこともあり,粗削りに非常に時間を要してしまいました.もともと母岩に小さな裂罅が走っていて,何とか割れずに持ってくれると予想しましたが,磨っている途中で裂罅に沿って小片がパラパラと取れてしまう.
裂罅から割れてしまうと元も子もないので,途中で見切りをつけて荒削りを終了した.砥石を替えて中削りをした.母岩全体が珪酸分に富み硬いことが判りましたので,うまく光沢が出てくれるかもしれない,と期待を以ていつもはこの後に仕上げに移るのですが,一段階作って研磨しました.
仕上げははじめ青砥で磨っていたのですが,思った以上に光沢が出てくれず,途中で中途半端に風化した硬いホルンフェルスに替えました.ちょっと光沢が出てくれたところで,灰黄色の比較的柔らかい砥石で磨き上げました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
上の2枚は初めの写真の右手の方のパイロクスマンガン石からなる部分を拡大しました.光源の加減で,あまりはっきりとしたピンク色に写ってくれませんでした.
つづいての2枚は初めの写真の中央を占める黄褐色の部分の拡大です.元ラベルのとおり菱マンガン鉱からなっていますが,研磨したところ灰緑色のテフロ橄欖石を伴っていました.また二酸化マンガンによる染みと思っていた,脈状の部分は非晶質の炭素物質のようでした.
母岩のチャートの部分の拡大です.割れ目に脈状の菱マンガン鉱が入っているのが確認できる箇所もありました.
こちらはマンガン鉱物のレンズと母岩の塊状チャートとの境界部分を拡大したものです.鉄分が多いのか黄色っぽく染色していました.
母岩の塊状チャートとともにマンガン鉱層を切っている石英脈を拡大しました.炭素物質のような黝ずんだ色をしていました.
黝ずんだ石英脈から分泌する細かい石英脈中に入っていた黄銅鉱です.母岩に場所にとらわれず鉱染するように入っている黄鉄鉱とは異なる産状で,明らかに黄色味が強く,はっきり外形のわかる粒状になっていないことから黄銅鉱と判定しました.
9枚目の写真の黝ずんだ石英脈の延長に幅が広くなったような部分があり,ここに自然銅を含んでいました.荒削りの時に赤い粒がすでに見えていて,途中で確認すると延びたようになった赤銅色の粒を確認しました.周りのやや青色味がかった鋼灰色の粒は閃亜鉛鉱と紛らわしいですが,拡大した上で劈開の有無を確認したところ輝銅鉱類のようでした.劈開は殆ど無いような感じでヌメーっとしていました.