いくつかの研磨した石148
前回に引き続いて滋賀県の石です.滋賀県東近江市九居瀬岩屋谷 扇子野鉱山のスカルン中の亜鉛鉱を一面研磨しました.永源寺ダムの少し上流にある日本コバ(標高934m)の南側あたりにあった鉱山です.元禄年間には休山していたとかで,明治になってから探鉱されたが続かなかったそうです.鉱石は前述どおりスカルン中の亜鉛鉱で,少量の黄銅鉱や方鉛鉱を含んでいました.
上の標本は数年前の新春交流会で入手しました.前回にも少し触れましたが,この地域はヤマビルが多いので未だ探索には行っていません.
研磨面では無い,標本の正面の写真です.各部位はこのようになっていました.
(研磨)母岩の一部に石榴石を含んでいるので,硬いかな~と思いきや,案外簡単に磨れてくれました.石榴石以外の部分はやや風化して分解しかかった灰鉄輝石で,ここが柔らかく,金属も含んでいるため早く磨れたようです.仕上げは青砥でしました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
黒色不定形塊状部が閃亜鉛鉱です.閃亜鉛鉱に伴う帯黄真鍮色に見える金属光沢部は黄銅鉱.粒状の真鍮色金属光沢部は黄鉄鉱.周囲の黄白色―緑黄色繊維状部は灰鉄輝石です.
こちらは母岩の割れ目に生成した孔雀石です.右上の方のやや透明感のある緑色部は珪孔雀石のようです.鉄黒色金属光沢部は閃亜鉛鉱.それに伴う帯黄真鍮色金属光沢部は黄銅鉱です.
4枚目の写真の部位の下の方です.右下の珪岩様岩石中に緑泥石類の鉱物を含んでいます.割れ目に生成したやや透明感のある緑色は珪孔雀石のようです.
黄銅鉱の多い部分です.灰緑色―黄褐色の灰鉄輝石の粒間を埋める細長い輪郭をした帯黄真鍮色金属光沢の部分が黄銅鉱です.一緒にある鉄黒色は閃亜鉛鉱です.
閃亜鉛鉱が脈になっている部分の拡大写真です.中央のやや強く反射しているのは灰鉄輝石の劈開面です.写真の上の方の黄褐色粒状は石榴石です.
引き続いて閃亜鉛鉱が脈をなす部分です.鉄黒色の閃亜鉛鉱の脈の一部に青っぽいところがあり,もっと拡大して劈開の感じを観察したところ方鉛鉱でした.右方の帯黄真鍮色金属光沢部は黄銅鉱.黄褐色部は灰鉄輝石です.
閃亜鉛鉱の多い部分です.
石榴石の多い部分です.中央やや右よりに赤褐色の粒がありベスブ石のように見えましたが,小さすぎて判別できませんでした.
おしらせ
店舗の商品棚の掃除を兼ねて,以前に石榴石コーナーだったところを蛍光鉱物標本のコーナーに変えました.
現在のところこんな感じですが,徐々に増やしていく予定です.
手持ちのUVライトで撮影を試みましたが,周囲が明るすぎてうまく映ってくれませんでした.
陳列した鉱物標本は今のところ,灰重石・ホタル石・ヘディフェン・スヴァブ石・含砒素燐灰石・マンガン方解石・ヴェルネル石・珪亜鉛鉱・コランダム・マラヤ石・シュレッキンゲル石・燐灰ウラン鉱・ベニト石・石膏・水亜鉛土・スローソン石・ソーダライトなどです.