鉱物の顕微鏡写真５９ ―黄銅鉱―
産地：Dreislar mine, Dreislar, Winterberg, Sauerland,
Rhine-Westphalia, Germany. 購入品(非売品)
Chalcopyrite 黄銅鉱
[組成]： CuFeS2
[結晶系]： 正方晶系 黄鉄鉱と比較して結晶はかなり少ない．
[色]：黄銅色・淡黄色．錆びと青色味を増し，やがて黒くなる．
[光沢]：金属光沢．
[モース硬度]：3.5～4
[比重]：4.2
[劈開]：無し．とある文献と，[011]に不明瞭とある文献がある．
[条痕]：緑黒色・黒色．
ほか，硝酸に可溶．塩酸には不溶だが表面が錆びる．(錆びない産地の標本もある．
南蛮吹きが伝わってから，銅の主要鉱石鉱物となった鉱物．判定が比較的楽で，かつ大量にあり見間違うことが無いので，最近は現場へ行くとサンプリングしてしまいます．
学生の頃に，北九州市の吉原鉱山近くをうろついていたときに，聞き込みを行った．数軒の農家に聴き込みましたが，うまく伝わっていなかったのか，金辺峠を越えた採銅所の方の在所の農家で，ようやく所在が分かった．このとき，お土産で頂戴した石が，吉原鉱山の黄銅鉱の塊だった．昭和３９年頃に採集された石だそうで，表面が酷く汚れていた．
これをいろいろ試して，もとの色に近づけることができた．(最終的には成形しなおした)
種類集めに一段落して，次は何にしようと思って，引き出しの標本を眺めていると，この時の黄銅鉱に目が留まった．「黄銅鉱ばかり集めてみよう．」と集め始めました．結晶のことが一般的に多いのですが，重複するとどこからともなく横槍が飛んできそうなので，塊状の黄銅鉱を蒐集することになった．
上の写真の標本は随分前の京都ショーで購入したものです．角砂糖のような苦灰石の結晶の上に，白色の重晶石と黄銅鉱の結晶がぽつぽつとついた石で，もっと良い標本もありましたが，全体のコントラストが気に入り，購入しました．今回，写真を撮るに当たって，いくつか海外産の黄銅鉱を並べてみましたが，やはりこの産地の標本にしました．
白色部は苦灰石．(顕微鏡下での撮影)
良い感じの結晶で，条線がややはっきりと確認できました．(顕微鏡下での撮影)
国産の標本ですが，前述通り集めまくっていましたので，どこの標本を採り上げようと少々悩みました．
産地：北海道洞爺湖町早月 洞爺鉱山(非売品)．黒鉱鉱床と聞いていたのですが，粗粒で結晶の付いた黄銅鉱が魅力的で購入したものです．
４枚目の写真の中央辺りにある空隙に入ってい居る黄銅鉱の結晶です．小さいものですが，双晶しています．(顕微鏡下での撮影)
産地：岩手県和賀郡湯田町土畑鉱山の黄銅鉱．(非売品)．この産地は胆礬や自然銅の立派な標本を出していた鉱山です．表面が全体的に錆びていて，輝銅鉱のラベルが付いていましたが，表面を処理すると大部分が黄銅鉱でした．
売り手に後で伺ったところこの石は閉山間近に入山し坑夫の退職金にするために残していた富鉱体からのものだとか．石英を多少含んでいるほかはほぼ粗粒の黄銅鉱からなっていました．
産地：広島県福山市神辺町下竹田 狭間銅山の黄銅鉱．(非売品)．９年くらい前に当地でサンプリングした石です．大きなため池の横に坑口がコンクリで蓋されていた場所があり，あとになってグーグルアースで確認すると集合墓地になっていました．当時はほかに何も覚えておらずこれと，黄鉄鉱があった程度でした．
産地：徳島県吉野川市山川町楠根地 高越鉱山の黄銅鉱(非売品)．数年前の大阪ショーで購入した標本です．三波川帯の結晶片岩中の含銅硫化鉄鉱床より．
産地：京都府船井郡京丹波町安栖里 鐘打鉱山 産．(非売品) 石英脈中のタングステン鉱床ですが，古くは藩営で露天掘りしていたという記録がある．上のの標本はその露天掘り付近でサンプリングした標本です．磁硫鉄鉱も含まれる石がみられましたが，上の標本は黄銅鉱に少し石英を伴っているだけの塊状鉱石です．
産地：京都府京都市北区鷹峯 三平鷹峯鉱山 産．(非売品) 地形図でみると京都市街から至近距離の場所にあるのに，入口が判り辛く，遠回りして訪問した現場でサンプリングした標本です．灰白色と黒色の混じる部分は菱マンガン鉱で，それを切る石英脈中に黄銅鉱の結晶が入っていました．
表面がやや錆びていますが，条線の確認できる黄銅鉱の結晶です．(顕微鏡下での撮影)
２に続く．
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