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別院の単斜灰簾石

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別院の単斜灰簾石

 

 先日,初谷川ハイキングの帰りに,帰り道に寄れる別院の市道法面の露頭を見てきました.この付近は超丹波帯の砂岩・頁岩層が広く分布していて白亜紀末期に貫入した花崗岩類によって接触部の近くはホルンフェルスになっている.この付近にも兵庫県の一庫ダムの周辺によく似た岩石がでているので,以前より気になっていました.一庫ダムの周辺は当地と同じようなホルンフェルスがあり,レンズ状で単斜灰簾石や濁沸石,束沸石などがみられ,割れ目に緑鉛鉱やモリブデン鉛鉱などの鉱物も見られました.ここより東方の延長に似たようなところは無いかと,探していたら近いところが別院付近でした.さらに東方は古生代の地層になって,こういうものは望み薄のようでした.

 現場は南掛から柚原に至る府道より少し南の山手に入った道路の法面で,少し前に拡幅工事をしたような跡が残っており,露頭の下にその時のものなのかは判別できませんが,転石として少量見られました.そこの暗色のホルンフェルスと,表面がやや風化してガサガサしたものを一つずつサンプリングしました.現場の露頭から北西方向に300mもいけば,貫入岩体の花崗岩類が谷底を中心に露出しています.

 前者は灰黒色の緻密なホルンフェルスで,2㎜内外の細い方解石脈を伴っていました.方解石脈に沿って割れ,母岩との境界付近に緑簾石と緑泥石を含んでいました.

 後者は暗褐色を呈し表面がガサガサしていて,灰黒色の部分と灰白色の部分が交互に層状になっているホルンフェルスでした.ガサガサした部分は酸化被膜や地衣類に覆われていたため,希塩酸と過酸化水素で洗いました.クリーニング後にガサガサした部分をルーペで観察すると,ガサガサした部分は石灰質のレンズで,それ以外の部分は頁岩と砂岩ホルンフェルスでした.頁岩と砂岩ホルンフェルスには特筆するべく鉱物等は入っていませんでした.

 このガサガサした石灰質レンズを分離しようと試みるのですが,風化の影響でボロボロと崩れていくため,いつも通りの標本サイズに小割しました.風化の度合いがよくわからないので,適当に割っていると変な方向から亀裂が入り標本になりません.大きく割ってから形の良いものを選んで,成形しました.

 

 黄緑色―黄色に見える部分が石灰質レンズ.灰白色―灰黒色部は砂岩ホルンフェルス.上の方の黒色部は頁岩.

 

 

 黄緑色に見える部分を顕微鏡で観察したところ,大部分が単斜灰簾石でした.一部は細長い脈状の晶洞になっていて,細かい結晶が確認できました.一部に明らかに緑色味の濃い緑簾石があり,画像では黄色に見える部分は淡黄色―淡褐色の単斜灰簾石でした.

 

実体顕微鏡下での拡大写真です.

 

さらにカメラのズーム機能で拡大したものです.

 

 小割した破片を改めて回収し,前述と同様に希塩酸と過酸化水素で表面をクリーニングしました.その後に顕微鏡で改めて観察すると,割れ目に絹糸光沢の角閃石類がありました.灰簾石の様ですが割れ目が光沢が鈍く,白濁したように見え透閃石か何かだろう.珪灰石はそれらしいものがありましたが,小さすぎて判別できませんでした.

 ほかにチップになったものの表面が黒色の地衣類に覆われている石があり,こちらも根気よくクリーニングしていました.地衣類の下から赤褐色の光沢の強い鉱物が見えてきました.「石榴石くらいはあるだろう」と思っていました.遠目では水酸化鉄が染みたようなものでしたが,拡大すると,ベスブ石でした.

ベスブ石.当地域ではあまり見られない鉱物です.サイズはかなり小さいです.石榴石との判別がこれでは難しいですが,一部に結晶が出ていたため判別できました.

 

更に,拡大したものです.

 

 

 当地から確認した鉱物は

 

 砂岩ホルンフェルス:方解石・緑簾石・緑泥石・濁沸石など.

 石灰岩レンズを含む砂岩ホルンフェルス:方解石・緑簾石・単斜灰簾石・ベスブ石・緑泥石など

 

 でした.

 

 


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