肘葛鉱山の吉村石
数年前の大阪ショーで「ばら輝石」のラベルがついた石をサンプル購入しました.表面が二酸化マンガンで薄く覆われていて,あまりにも汚らしいので,希塩酸と過酸化水素を使用して表面が白色化しない程度まで処理しました.当地はOrthoericcsonite 直方エリクソン石という稀産鉱物を産していて,販売会に売り出されていては当地の石を購入していました.酸で処理した石は上手く二酸化マンガンが取れてくれましたが,ばら輝石の表面に板状の光沢の強い褐色の鉱物がついて居ました.筆者は直方エリクソン石を未だ見たことがありませんので,これかもしれないかな~ っと早合点していました.標本は結構粗粒のばら輝石で色も濃くもう少しサイズがあったら見栄えがするのだが,60㎜×40㎜×20㎜の黒箱より少し小さめでした.
肘葛鉱山は岩手県の北部にある層状マンガン鉱床の一つです.のちに稼業中に当地に訪問された知人に伺うと「川沿いに選鉱所と貯鉱があり,貯鉱より探させてもらった」こと.「貯鉱にはばら輝石を主とする鉱石しか無かった」ことなどを耳にした.
筆者のサンプル集のうちマンガン鉱床に関する鉱物標本群は,今のところ一つの標本も散財していない.このサンプル集から似た石をいくつか拾っていると,3件ヒットした.一つは田野畑鉱山の吉村石,もう二つは田口鉱山の吉村石とヘイトマン石.
吉村石の存在を忘れていたため,4つの標本を見比べていると,どうも肘葛鉱山のばら輝石の表面についている褐色板状は吉村石のようだ.あとは化学分析に頼るしかないので「」(括弧)つけて吉村石とした.ついでにネタになるかわかりませんでしたが,一応写真に撮ってみましたので,下に挙げておきます.(非売品)
やや暗い黄褐色の劈開が見られる部分が「吉村石」.赤い部分はばら輝石.