いくつかの研磨した石96
岡山県備前市吉永町笹目 笹目の旧坑の硫砒鉄鉱を一面研磨してみ
ました.10年ほど前に一緒に行った方に案内されて行った現場で,
飯掛から万能池を過ぎ,大藤中へ至る県道の西側に坑口3つが残る
旧坑がありました.コンクリで土砂流出の工事がしてあり,道路の側ま
でズリ石が転げ落ちていました.大したものは無いと案内されいくつか
サンプリングしたものの一つです.今年の春にこちらに来る用事があっ
て,久々に寄ってみましたが,すでに二車線道路になっていて,旧坑の
あった斜面も削られてコンクリの法面になっていました.鉱床はやや変
質した凝灰岩を切る石英脈に硫砒鉄鉱や黄銅鉱などを含んだ鉱脈鉱
床で,上の写真のような貧弱なものしかありませんでした.ほかに二次
鉱物に孔雀石や水亜鉛銅鉱などがみられました.
(研磨)石英脈に変質した凝灰岩が沿う石ですので,簡単に磨れてくれ
ると思い工業砥石で一気に削り,その後に青砥で磨りました.石英の部
分の光沢があまり出てくれませんでしたので,研磨チャートで表面をこす
ると光沢が出てくれました.
(以下 顕微鏡写真です.)
一面研磨がひと段落ついて顕微鏡で拡大したところ,硫砒鉄鉱と緑泥
石・石英は判りました.黄銅鉱はこの石にはほとんど付いていません.
2つ目
岡山県美作市宮原鈩 金生鉱山の黄銅鉱を一面研磨してみました.
以前の回に四面銅鉱・斑銅鉱を含む石を研磨しましたが,今回は脈
の一部がでてきましたので,裏面を一面研磨しました.
現場は兵庫県との県境を跨いで鉱床があり,金生山と桜山に分か
れていました.明治の初めに立派なホタル石が出たらしくそれが有
名だったそうです.
当地はStannoidite 褐錫鉱の原産地として知られています.
(研磨) 見た限り硫化の塊なので,簡単に磨れると思い荒砥で削れ
具合を見ながら磨って行きました.確認せずに一気に磨ると柔らか
いため削れ過ぎてしまう.表面が平滑になるまで磨ったあと,青砥
で仕上げしました.
(以下 顕微鏡写真)
顕微鏡で観察していると,表面の肉眼判定では見つけられなかった
鉱物がよく見つけられます.当初は黄銅鉱と閃亜鉛鉱しか入ってい
ないと思っていましたが,方鉛鉱と黄鉄鉱,硫砒鉄鉱が入っていまし
た.ほかの研磨していない部分を改めて顕微鏡で観察すると黄錫鉱
のような部分も見つけられました.
3つ目
大阪府豊能郡能勢町山田 豊能鉱山の炭マン鉱を一面研磨してみま
した.大阪府でおそらく一番北に位置するマンガン鉱床.すぐ近くに剣
尾山花崗岩が貫入しているため強く熱変成を受けています.現場には
13年前に初めて訪問しました.まだ原付バイクに乗っていた時のもの
です.上の石はそのころにサンプリングしたものの一部です.
(研磨)いわゆるあずき色炭マンなので,これも一気に磨り上げました.
中央部がやはり堅く,周囲の白色に近い部分は風化しているためか
非常に柔らかく,均一に磨り上げるのが難儀しました.
仕上げは青砥と研磨チャートでしました.
(以下 顕微鏡写真)
真ん中はアレガニー石の混入かそれともほかのヒューム石系の鉱物の
混入かは肉眼では判りませんでした.淡紅色部は菱マンガン鉱です.
中央の黒色―暗褐色粒状部がマンガンスピネルで,部分的に磁力があり
ヤコブス鉱になっているところもありそうです.黒色部は二酸化マンガンに
よる染み,あるいは菱マンガン鉱の酸化被膜です.
当地では黄鉄鉱・黄銅鉱・磁硫鉄鉱・緑マンガン鉱・ヤコブス鉱・マンガン
スピネル・二酸化マンガンの鉱物・アフテンスク鉱・ファイトクネヒト鉱?・
菱マンガン鉱・孔雀石・テフロ橄欖石・満礬石榴石・ヒューム石系鉱物・
ばら輝石・角閃石類・ネオトス石などが知られています.
4つ目.
大阪府豊能郡能勢町田尻 名月鉱山の珪孔雀石からなる石を一面研磨
してみました.こちらも豊能鉱山と同時期に行ったサンプルの一部で,脈
石英に黄銅鉱や閃亜鉛鉱が付いていました.脈の反対側から磨ったら出
てくるのではないか..と思い磨ってみました.鉱山は名月峠(車道)の南
にある墓所の近くにあり,兵庫県川西市から北に続く奇妙山親鉉の北限
にあたります.どういう訳かこの親鉉は南の方が銅分が多く,北に上がる
ほど磁鉄鉱が多くなる傾向にあります.北限なので,一部に丹波の頁岩
や赤白チャートがあったりしました.また大阪北部の鉱山はヒカリモノが
少ない傾向にあると,知人が仰っていた.当地は主に珪孔雀石くらいしか
無いと云われていた現場です.
(研磨)石英脈が母岩の中央に切っているので,研磨は大変だろうと思っ
て磨り始めました.裏面は塊状の緑泥石(シャモス石か?)で覆われてい
て,この部分を磨っているときは楽でした.
下から石英脈が出てくると,その先が大変で石英以外のものが先に磨
れてしまって,うまく平坦になりません.荒砥の角で先に中央の石英を削
ってから周りの緑泥石を落とすとなんとか形になりました.
しばらく磨っている(約12㎜)と中から酸化鉄が出てきて,鉄錆のような
汁が出るようになってきました.汁が出始めて,その色が薄くなったところ
で粗削りを止めて,仕上げをしました.
(以下 顕微鏡写真です)
顕微鏡で観察すると,随分カラフルな石になりました.
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