鉱物の顕微鏡写真33 ―紅簾石―
産地:St Marcel, Valled' Aosta, NW of Piemonte, Italy.
(購入品・非売品)
Piemontite 紅簾石
組成:Ca2Al2Mn[OH|O|SiO4|Si2O7] 単斜晶系
形態:柱状.
色:帯紫赤色・褐紫色・灰赤色・暗赤色ガラス光沢.
比重:3.4-3.6
モース硬度:6
劈開:[001]に完全.
条痕:暗赤色.
本邦にも広く産する紅簾石です.原産地というよりPiemonteの
地名の付いた石が欲しくていろいろ探していました.サムネイルに
やっと入るような小さな石が多く,ようやくある程度の大きさの石を
入手することができました.(大きさは75㎜×60㎜×20㎜の箱に
フィットするくらい)
上の写真の石の産地はPiemonteで,灰白色―白色でやや粗粒
の石英中にやや肉眼的な結晶及びその集合体が付いています.
塊状に見える部分に非常に細かいブラウン鉱を,ほかの石英の
部分に方解石を伴っています.類似の色が無いということが
ある教科書にありましたが,ここ最近になって似た色の石が幾つ
か出てきました.ストロンチウム紅簾石やストロンチウム緑簾石
などがそうで,サンプルは入手しましたが全く区別がつかずどの
部分がそうなのか判りませんでした.肉眼ではほぼ無理っぽい.
産状は広域変成岩(結晶片岩)中に産するのが普通で,本邦の
ものでは上述のブラウン鉱や満礬石榴石,ばら輝石などと一緒
にでてくることがあるようです.
いわゆる紅簾石片岩に含まれている赤色を呈する紅簾石は,
じつは含マンガン緑簾石で,ブラウン鉱などのマンガン鉱物を伴
っているもの,結晶片岩中のマンガン鉱床のものなどは紅簾石
であることが多いという話を耳にしました.
聞いてすぐにいわゆる紅簾石片岩にラベルを付けていたものを
削除して層状マンガン鉱床から産した標本のみにしましたが,肉
眼ではほぼ判別がつかず,色の濃いものや表面に二酸化マンガ
ンの染みの付いているものなどは( )をつけて?にしました.
(以下顕微鏡写真)
やや肉眼的な結晶.長さ約5㎜.白色部は石英.
こちらも同じ石の別の部分を顕微鏡で拡大したものです.
塊状に見える部分です.
次に本邦の標本です.
長崎県西彼杵郡西彼町大串鉱山の紅簾石です(購入品・非売品)
学生時代に原付を駆って何度か探しましたが行きつけずになって
いた現場のものだったため購入しました.暗赤色部が紅簾石です.
長崎県長崎市戸根鉱山の紅簾石です.こちらも学生時代に
サンプリングしたものです.暗赤色部の紅簾石と石英との
コントラストが美しい標本です.(非売品)
真ん中の赤い部分が紅簾石です.産地は福岡県福津市河内
(宗像)鉱山で,鹿児島本線の福間駅からバスを待っていたの
ですが,本数が少なくて待っているより歩いたほうが早いとい
う結論に達して約1時間半かけて,季節風とみぞれの降る中
徒歩で訪山した思い出のある産地です.結晶片岩のような母
岩に入っています.ほか無色の燐灰石を伴っていました.
産地:神奈川県山北町悪沢の紅簾石です.上の写真の標本
とは産状と外観が異なっていて,この標本は塊状になってい
ます.