鉱物の顕微鏡写真32 ―カルパチア石―
産地:Picacho mine, Picacho peark, New Idria district, Diablo range,
San Benito Co., California, USA.(OY社で購入・非売品)
Karpatite カルパチア石
組成:C24H12 単斜晶系
色:黄色・黄緑色・黒色.ガラス―絹糸光沢.
比重:1.35
モース硬度:1.5
劈開:[001]に完全.
条痕:黄白色.
短波紫外線で蛍光:黄緑色・黄色.
次はカルパチア石にしました.以前に少し触れました有機質の鉱
物です.石炭類に伴われるものをいくつか紹介しましたが,今回は塩
基性岩中の水銀鉱床からのものです.
上の標本は中生代の超塩基性岩体(橄欖岩・蛇紋岩・斑糲岩)中の
鉱脈鉱床とのことで,母岩は蛇紋石鉱物と炭酸塩鉱物からなっています.
写真の白い部分は玉髄(石英)で,普通は蛇紋岩中に石英が貫入す
ると石英の周りの蛇紋岩は滑石になっていることが多くありました.
この石もそうなってそうですが,肉眼的には確認できていません.
微細なものが含まれているのかもしれません.
カルパチア石は蛇紋岩中の石英に包まれるという,ちょっと不思議
な産状をしています.高温ではできそうにない有機物が石英に包ま
れています.石英の周りの蛇紋岩は熱水が通ったためか多少変質
しているようで,緑泥石質に変わっていました.
短波紫外線灯で非常に鮮やかな黄色・黄緑色に蛍光する鉱物とし
て有名で,以前に触れたときはうまく映ってくれましたが,今回は失
敗しました.
UVP(短波紫外線灯)下での撮影.
(以下,顕微鏡写真)
黄色部がカルパチア石.中央の赤い部分は辰砂です.通常
辰砂は炭酸塩か石英と黄鉄鉱を伴っていることが多く(本邦
のものだけかも),この石には硫化物は辰砂しかみあたりま
せんでした.ほかに輝安鉱や鶏冠石などもありませんでした.
たまたまこの石には付いていなかっただけかもしれませんが.
こちらは玉髄に包まれて産しているカルパチア石です.玉髄
中に入っている黒色の鉱物が小さすぎて判りませんでした.
黒辰砂かもしれません.玉髄の表面の褐色部は鉄分による
と思われる染み.
こちらはカルパチア石が抜けた穴です.穴の奥の方に少し
黄色い部分が残っています.白い部分は玉髄です.
こちらは母岩を撮影したものです.白色部が石英.緑色部が
蛇紋石系鉱物.褐色部は菱苦土石.