いくつかの研磨した石74
今回も2点 紹介します.
その1
滋賀県高島市武曽横山 高島鉱山のばら輝石を一面研磨
してみました.琵琶湖の西に比良山地が南北に細長く横たわって
います.その主稜線を境に花折断層がとおり,東側に貫入岩体の
比良花崗岩が分布しています.北に上がるほど花崗岩の範囲は
狭まり,主稜線の東側まで丹波帯の堆積岩が分布しています.
貫入岩体の比良花崗岩は丹波帯に熱変成を与えて,ホルンフェ
ルス化しています.鉱山はホルンフェルス化した堆積岩中に胚胎
する層状マンガン鉱床の一つです.高島砥の採掘場跡がすぐ近く
にあり,鉱床の傍の川にも似たような石がたくさん落ちていました.
鉱石は主に二酸化マンガンで,いわゆる「ぎら鉱」と呼ばれる,
光沢の強い石墨に近い質感を呈し,アフテンスク鉱と呼ばれる
二酸化マンガンの鉱物を主とした鉱石を産していたという.
ばら輝石や菱マンガン鉱・満礬石榴石も多少はありましたが,
裂罅に二酸化マンガンの染みを多く伴い,あまりきれいな石では
ありませんでした.上の標本はサンプリングしたものの整形時に
出たものを一面研磨してみました.
(研磨)基本はばら輝石を多く含む石なので,非常に硬いことを
承知で荒砥で削り始めました.見た目と多少異なり,ばら輝石以
外に菱マンガン鉱を含んでいるらしく,案外楽に削れてくれました.
仕上げは西紀町の高王山の青砥でしました.
磨っているときに気づきましたが,写真の中央部が赤紫色になって
います.ほかの産地(野田玉川鉱山や茂倉沢鉱山,朝地鉱山など)
のものもこの手の色のばら輝石を見たことがありました.紫色系の
起源は判りません.右のほうに本来の色のばら輝石が少しあるの
で,局所的のようです.ばら輝石のほか少量の菱マンガン鉱を伴っ
ていました.
その2
京都府木津川市加茂町法花寺野のばら輝石とテフロ橄欖石
からなる石を一面研磨してみました.「法花寺野」はコレクター
の通称で,大字は「河原」で法花寺野の在所は現場の西にあ
りました.もともと法花寺野鉱山というマンガン鉱床が当地に
あったらしく,その後に採石場になりました.砕石中にマンガン
の露頭が出て有名になりました.現在はマンガンの露頭は無く
なり,採石場もありません.上の標本は10年以上前に木津川
の観察会に行ったときに,ついでに寄りサンプリングしたもの
です.
(研磨)こちらもテフロ橄欖石とばら輝石を主とする石なので,
非常に硬いことを前提に取り掛かりました.取り掛かってみる
と高島鉱山の石より簡単に削れてくれました.
仕上げは鴨瀬谷山の砥石でしました.
研磨していくと普段割れ端しか見ていないので,磨くとこんなに
イイ感じの石になるとは思いませんでした.青緑色のテフロ橄欖
石と赤色のばら輝石とのコントラストがうまく出てくれました.
一部に橙色の満礬石榴石をともなっていました.
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