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兵庫県与布土鉱山の層状硫化鉱です.粟賀山の西に位置する丹波帯の堆積岩中の鉱脈鉱床で,粟賀山から西に派生する尾根の突端に衣笠山があり,これの南尾根の先端に坑口がありました.坑口は車道横付けで,何度も鉱石を探しに訪れましたが,鉱石らしいものは見られませんでした.先日,蝋石山に行った帰りに何も無いのを前提に寄ってみました.冬季なので下草が無かったこともあり,坑口にたやすく近づくことができた.周辺をぶらぶら探していると,同好者が緑色岩っぽい石から方鉛鉱を見つけた.いままで鉱石の感じが判らなかったため見過ごしていた母岩の石からだった.文献には丹波帯の粘板岩中の鉱脈鉱床となっていましたが,現場にはそういう石は無く,排水の影響でボロボロになった頁岩やチャートくらいしかありませんでした.鉱石鉱物の傾向が分かりましたので,表面をくまなく探していると,上の写真の石が見つかりました.厚みが4cm位しかなく成形したら石が小さくなってしまうので,表面を磨ってみました.酸化被膜は多くが褐鉄鉱でしたが,一部に硫酸鉛鉱のような白色部が見えたので,軽く磨ってみると内部は方鉛鉱でした.ダメ元で全体を磨ってみると層状になった硫化の集合で,思ったよりも感じの好い標本になりました.盤が石英を多く含んでいましたので,硬いかと思いましたが,裂罅を充填したのは石英だけではなく,暗赤色の閃亜鉛鉱に充填していましたので,案外簡単に磨れてくれました.酸化被膜の褐鉄鉱がなくなるまで磨りこんでも良かったのですが,酸化被膜の褐鉄鉱が磨っていくにつれて塊状になってきましたので,残しました.
帯赤黒色亜金属光沢(上部)が閃亜鉛鉱で,磁石でかなり引き寄せられるので磁鉄鉱を含んでいるようです.真ん中の大部分を占める真鍮色金属光沢部は磁硫鉄鉱(磁石で強く引き寄せられた)でした.顕微鏡で拡大すると比較的輪郭のはっきりした黄鉄鉱の微粒を含んでいました.一番下の灰色の部分が珪岩(チャート)で裂罅を充填するように脈に近い方は閃亜鉛鉱が,遠くなるにつれて石英がそれぞれ充填しています.脈に近い盤際に帯黄真鍮色金属光沢の部分がありますがこれは黄銅鉱でした.磁硫鉄鉱や閃亜鉛鉱の層を切る灰白色に見える部分は肉眼的には鉛灰色金属光沢で方鉛鉱が入っています.
ほか現場で確認した二次鉱物は石膏(頁岩の割れ目)と珪孔雀石(母岩の表面)が少しありました.脈石鉱物は石英・方解石・緑簾石・緑泥石などでした.
鉱石鉱物の産した坑口はおそらくこの標本を産した坑口で,そのほかに東側に尾根を回り込んだ川の瀬の西側に一つ坑口があって,橋の南詰めから踏み跡が続いています.
次回寄ったときはこちら側を探索してみたい.
附記
与布土鉱山に行った日の午前中に,穴さがしをしていました.八佐鉱山の西側を探索していると,滝に至る道標があり,辿ってみました.
道標.この近くに段鉱山があるらしいのだがよくわからなかった.
一応整備してあるようでしたが,転石や倒木が多く少し歩きづらい.
道なりに歩いていると川床がナメのようになったところに出て,少し登ると奥に真っ白な滝が見えてきました.
道は右岸から左岸に移って上の写真の右手の階段を上るようについていましたが,肝心の橋が流されたか朽ちたのか,現場には無く苔むした対岸の露岩は余りにも滑るので,無理にわたりませんでした.滝は望遠で写しました.
奥はこんな感じでした.
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