露頭めぐり
堂渕川
京都府宮津市小田中の茶屋
堂渕川は宮川が大江町佛性寺の河守鉱山の手前で別れて北上する支流で,川原の転石でいろいろな岩石が観察できる川です.
今回も,普甲峠の河守・大江山超塩基性岩体と宮津花崗岩の接触部を観察した後で寄りました.
下流側.左上に見える道は府道.
上流側.あしもとは蛇紋岩の河床.以前はこの川床にロジン岩のレンズが挟まっているのが観察できましたが,今回きたところ,見つけられなかった.流されたのか,あるいは土砂で埋まったのかは不明.
そのかわり,ほかの捕獲岩?を見つけました.このあたりの塩基性岩は古生代とのことで,それより古い岩片なのか.捕獲岩?も全体的に蛇紋石化が進んでいて,源岩がなにか判りませんでした.
以下,川原の転石の紹介です.すべて直写しです.
アンチゴライト.繊維蛇紋石とも.この付近はこの鉱物がけっこう多くみられる.
河岸に積んである石より.異剥輝石斑糲岩.石基は蛇紋石化が進んでいるようで,表面はスベスベしていました.
接写で撮影.斑晶のように見える暗緑色部が異剥輝石(透輝石の変種).
少し下流の炭酸塩鉱物の脈の見られる露頭.
方解石に少量の霰石を伴う露頭.表面は若干,雨水で溶けたようになっていました.
露頭の別の部分.
こちらは表面が溶けたようになったものの,六角柱状の結晶が観察できました.
帰りに上流にある砕石場の前をぶらぶらしたところ,入口付近で緑色岩を一つ拾いました.灰緑色でやや緻密な母岩を白色の方解石の脈で切っているもので,その周囲に俄かに黄色味を帯びた繊維状の鉱物が入っていました.
転石なため,たぶん砕石場から出た石と思われるが,小さな石なので,サンプリングしました.表面をきれいに掃除して,弱酸で軽く洗って風乾させました.
脈を構成する方解石は粒が粗く,劈開によると思われる罅(ひび)が見え,半透明でした.その脇に俄かに黄色味を帯びた白色繊維状の鉱物が付いていて,珪灰石と思われるが,こんなところから出るものかと思っていました.
繊維状の部分は希塩酸では全く反応が無く,周囲の方解石のみ発泡がありました.脈だけで見るとスカルンで脈の端っこに黄褐色粒状の石榴石が付いていました.
また真夜中に室内を真っ暗にして,短波紫外線灯を照射したところ,暗いオレンジ色に蛍光しました.方解石はマンガン分の含有が少ないのか赤く蛍光しませんでした.産状と諸性質より珪灰石に同定しました.
以前に縦貫道の大江山トンネル南口の真上くらいに通っている林道の災害復旧工事現場の堆積場で異剥輝石斑糲岩を切る脈で同様の鉱物があって,XRDで名称を決定しました.これを見ているので,同定はやや楽でした.
これで今回の露頭めぐりは終了としました.