研磨石
いくつかの研磨した石303
福井県三方上中郡若狭町藤井鉱山の園石・テフロ石・ばら輝石からなる高品位マンガン鉱を一面研磨しました.ずいぶん前にサンプルとして購入していた標本で,長いこと標本棚に置いていた所為か,一部が黒ずんできていました.
もともと付いていた黒色の酸化被膜を改めて小ハンマーで斫り取って成形しなおしましたが,黒変化した部分は新鮮な部分が出てくれませんでした.
一部に硬いばら輝石が来ているので,研磨には時間がかかるだろうと思ってしばらく磨らずに放置していましたが,思い切って一面研磨しました.
(研磨) 前述のとおり標本の一部に硬いばら輝石を含んでいて,かなり磨り難いだろうと予想していました.カーボランダムの荒砥で先にばら輝石の部分を削り取って,周辺をあとから磨って高さを合わせました.硬度が高い部分はここのみで,石英などは入っていなかったので比較的早く磨り上がりました.
研磨中に黒変しかかった灰緑色油脂光沢のテフロ石の中に赤銅色金属光沢の紅砒ニッケル鉱が小さな粒状で顔を出しました.凹凸がまだ取れてませんでしたが中研ぎして,このまま標本箱に戻そうと思って磨ったところ磨り切れてしまいました.もともと薄いものだったのかもしれません.
別の部分のテフロ石の中に黒色金属光沢の粒があって,こちらは磨っているときに硫化水素の臭いがしました.おそらく閃マンガン鉱が入っていたのだろう.
比較的高品位鉱石なのに回収されなかったのは硫黄分が含まれていたため鉱石にはならなかったのだろう.
標本全体の黒ずみは一部を除いて,だいたいは取れてきたので,中研ぎに移りました.普段は大村砥の目の細かいもので磨るのですが,今回は八鹿町日畑の砂岩で研磨しました.目が細かく揃っているので,使用できるだろうと思っていました.
高さが揃うのはかなり早くなりました.このあと青砥で仕上げに係りました.赤紫色の炭マンの部分はもともとかなり軟らかかったので,なかなか光沢がでてくれませんでした.ばら輝石は硬度がもともとあるので,ここばかり光沢が出て,かなり群のある仕上がりになりそうでした.
砥石を黄色の仕上砥に変えて研磨しましたが,やはり光沢は出てくれず,研磨チャートで,キュッキュ,キュッキュと音がするくらい押し付けてしばらく水に濡らしながら磨り合わせました.
5分くらいこすり合わせていると,平滑になって僅かな隙間に水分が入るのか密着し始めて,音はしなくなりました.7~8分で水洗いし風乾させて仕上がりを見ると,鏡面磨きに近いくらいの光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
ばら輝石の接する部分の拡大です.見た目で鏡面磨きに近いくらいになっていると思っていても,顕微鏡で見ればまだまだ傷だらけです.鮮やかな赤色部がばら輝石.黒色部は二酸化マンガンによる染み.灰緑色油脂光沢部はテフロ石.
テフロ石の多い部分の拡大です.白色の菱マンガン鉱からなる細い脈で諸所が切られています.接する淡い赤紫色部はアレガニー石です.
テフロ石とアレガニー石・園石を含む部分の拡大です.灰緑色のテフロ石・灰白色―淡紅色の菱マンガン鉱,淡い赤紫色―茶褐色のアレガニー石.園石は暗い僅かに紫色がかった赤紫色部です.