岩石
複輝石橄欖岩(レルゾライト)
岩手県花巻市大迫町岳川 早池峰
(非売品)
Lherzolite 複輝石橄欖岩(レルゾライト)
サイズ:69㎜×24㎜×43㎜.
深成岩.古生代オルドビス紀.早池峰複合岩類.中岳蛇紋岩体.
橄欖岩の一種.
[構成] 50%~90%の橄欖石に直方輝石と単斜輝石を含有する粗粒な岩石.
副成分としてクロムスピネル(ピコタイト)や石榴石を伴う.
もともとラベルに「含クロム石榴石」とあって購入した標本です.暗緑色の岩石にクロムが起因すると思われる鮮やかな緑色の粒が入っていて,これが含クロム石榴石と思っていました.
顕微鏡で組織を観察していたところ,鮮やかな緑色部の大部分が劈開があって,ほかの部分も併せて観察したところ含クロム透輝石でした.同様の色で微細な粒状で入っているものが石榴石のようでした.
透輝石はクロムが入っているので鮮やかな緑色を呈していて,肉眼でもわかったのですが,直方輝石(頑火輝石)はどこにいるのだろうと思っていました.
標本のちょうど裏面に風化面がついていて,そこを観察していたところ,直方閃石(頑火輝石)が入っていました.
裏面の画像を挙げます.
裏面.
裏面の白っぽく見える部分は橄欖石で,ルーペで観察すると俄かに緑色味があって,それと判りました.見た目で大きな緑色部は含クロム透輝石で,この面には石榴石は含まれていませんでした.
橄欖石の一部はすでに蛇紋石化して,表面を手で撫でるとスベスベしている部分がありました.
黒色粒状の鉱物はスピネル系の鉱物で,磁鉄鉱のこともあるので,ネオジム磁石をぶら下げて,磁力テストをしたところほとんど反応がありませんでした.クロム苦土鉱かクロムスピネルだろう.
直方閃石(頑火輝石)は褐色―茶褐色の長方形に近い輪郭の部分で,透明―半透明で光沢の強い鉱物でした.
標本の上のほうに「岳川」と書いているのは,ラベルと本体がほかの標本とごっちゃになったときに,識別のために記入しています.ほかに日付や標本番号を記入することもありますが,これだと,日付を記入した台帳を失えるともうどこの石かわからなくなり,標本番号も元帳を失えると産地が分からなくなるためです.
元帳は当方も付けていますが,けっこう紛失しやすいので,標本本体に記入しています.それに,産地名なら標本の裏に記入しているので,ラベルと箱を紛失しても,地形図や地質図でだいたいのところが確認できます.
この標本は産地名だけ記入していますが,モノによっては経緯度を記入しているものもありました.