研磨石
いくつかの研磨した石298
佐賀県唐津市厳木町笹原 厳木鉱山新坑鉱床のばら輝石―菱マンガン鉱からなる集合を一面研磨しました.当地のサンプルは以前にNo.7ヤコブス鉱とNo.71でばら輝石を取り上げました.今回は肉眼的に菱マンガン鉱が観察できるサンプルを使用しました.
(研磨)ばら輝石に菱マンガン鉱を混入するサンプルなので,比較的軟らかいと踏んで,磨り始めました.黒色の二酸化マンガンの被膜が磨り削れた後から急に硬くなりました.菱マンガン鉱を多く含む部分が先に摩耗して,凹地ができてしまうため,先にばら輝石の多い部分を研磨してから高さを合わせました.
肉眼的に,菱マンガン鉱が含まれていたのですが,黒色の二酸化マンガンに覆われていた部分も多く,研磨前には確認できていなかったテフロ橄欖石とアレガニー石が内部から出てきました.石全体にまばらに黄橙色―茶褐色粒状のヤコブス鉱―マンガンスピネルが入っていて,弱い磁性があり,見た目高品位部のアレガニー石―テフロ橄欖石の集合の部分にも小粒ながら入っているのが確認できました.
全体の高さを合わせるために,高品位部は削れてしまうだろうとは思っていましたが,磨り切って高さを合わせたところ見た,目高品位のこの部分は何とか残ってくれました.
サンプルの中央部を切るように鮮やかなピンク色のばら輝石が脈状に入っていました.脈のようにして入っているばら輝石にそって,黄銅色金属光沢の黄銅鉱や鉄黒色金属光沢の閃亜鉛鉱が小粒で入っていました.この部分は軟らかいので,さきに磨り切れてしまうだろうと思っていました,平滑にして観察したところ硫化鉱物も残っていました.
中研ぎに砂岩―泥岩質の砥石で軽く磨ったうえで仕上げに係りました.通常は中研ぎしないで,青砥に移るのですが,結晶粒のやや粗いばら輝石が入っていたので,中研ぎの工程を入れました.ばら輝石はこの集合の中では一番硬く,一度研磨傷が付くとなかなかその後の研磨では,傷が取りづらいためで,砥石が石に負ける音がするまで磨りました.
そのあとで仕上げに移りました.仕上げははじめ青砥で磨っていたのですが,光沢がばら輝石と満礬石榴石しか出ず,硬度が低く凹地のようになった菱マンガン鉱からなる部分には届いていませんでした.あまり強く削っても,この部分に砥石が届かないので,#4000番手のペーパーでゆっくり磨ったところ全体に光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
菱マンガン鉱―テフロ橄欖石からなる部分の拡大です.白っぽいピンク色の部分が菱マンガン鉱で,黒色の二酸化マンガンを伴っています.テフロ橄欖石は画像の下の方の大部分で,淡褐色―淡灰緑色塊状をなしています.画像全体の鮮やかな赤色はばら輝石です.
脈状にやや粗いばら輝石が集合し硫化物を伴う部分の拡大です.淡い黄銅色で輪郭のはっきりした粒になっているのは黄鉄鉱,輪郭がはっきりせず黄銅色金属光沢の集合になっているのが黄銅鉱です.硫化鉱物の周辺や接する部分は菱マンガン鉱が入っているらしく,光沢も鈍い感じがしています.そのほかの鮮やかな赤色はばら輝石です.たまに入っているのですが,画像の上の方に橙色の粒状は満礬石榴石です.
アレガニー石―テフロ橄欖石からなる集合の拡大です.画像の左下付近に赤褐色―褐色の塊状がアレガニー石で祝儀の灰緑色―淡褐色部がテフロ橄欖石です.その周囲にある灰桃色―帯白桃色は菱マンガン鉱でその集合の中心にある黒色は二酸化マンガンと思っていましたが,周囲と未研磨面の観察で劈開があるので閃亜鉛鉱のようです.右上の方にも少し付いていました.ほか鮮やかな赤色粗粒の部分はばら輝石です.
閃亜鉛鉱の粗粒な部分を含む集合の拡大です.鉄黒色金属光沢小塊状部が閃亜鉛鉱です.中研ぎの時に肉眼観察で顕著な劈開が観察できていましたが,仕上げをした後は,観察できなくなっていました.周囲にある橙色部は満礬石榴石で,淡いピンク色―白色部は菱マンガン鉱,鮮やかなピンク色部はばら輝石です.淡い真鍮色―淡い黄銅色金属光沢粒状部は黄鉄鉱です.