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牧谷鉱山 福井県越前市牧谷筆黒谷

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露頭めぐり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牧谷鉱山

福井県越前市牧谷筆黒谷

 

 

 

 10年くらい前に一度訪問した.当時はほとんど画像に坑道や施設等の記録を残していませんでした.矢良巣岳のあとでいくつか雑鉱山へ行った後に寄りました.

 

 

 牧谷鉱山は江戸時代より断続的に稼業されてきたという古い銀山で,大正の中頃まで「上牧谷鉱山」と「牧谷鉱山」の2つがあったそうです.その後に幾多の変遷を経て一つになったようで,主要鉱床に「大間歩鉱床」「紅殻山鉱床」「葛根ヶ洞鉱床」と通称聖又にあるという「蛇田ヶ洞鉱床」からなっていました.当初は銀鉱で,ベンガラ,亜鉛鉱,銅鉱をのちに稼業したという.

 

 筆黒谷沿いの林道はほとんど車が通った形跡の無い道で,200mほど進んだところで倒木で通れなくなっていました.紅殻山鉱床の疎水坑から流出した水酸化鉄による染みのある坑内水が林道まで流れてきていて,諸所に褐色に変色していました.倒木のところから歩きで登りました.

筆黒谷の林道.竹の倒木でこれ以上先には進めなかった.

 

 先に,水が流出している疎水坑から見に行きました.竹ヤブが切れたところから入り,黄褐色の水を追って少し登ると,崩土で閉塞した坑口がありました.

疎水坑.昭和初期に発行されたよく,参考にしている文献にそうありました.

 

 林道に戻って,紅殻山鉱床の坑口を見に行きました.褐色の坑内水が流出している地点よりわずかに70m進んだ右側から入りました.

右手が紅殻山のズリ.雑草に覆われていた.

 

ここから取り付いた.先人の踏み跡があって,すんなり登れました.

 

大切坑?.坑口は崩土で閉塞していました.向かって右手にコンクリの土台があって,選鉱所の跡かもしれない.ほかの文献に依ると大正4年5月に亜鉛鉱の販売目的で旧選鉱所を廃止し新しく選鉱所を設置したという.当地より,下流にかけて東岸に段々の平地があって,諸施設があったと推定できた.このほかに銅鉱石の処理のために精錬所を開設し,焼鉱炉4基と山下炉1座を開設したとか.コンクリの土台の近くに鉱石らしいのはあまりありませんでした.

 

 取付きに近いところに上の方に上がっていく幅約1間の道があって,辿ってみました.2回明確に折れて上のズリまでついていたので,鉱山道のようです.

鉱山道の途中より上の坑口のズリ.

 辿っていくと,ズリの上に出て,露天掘りをしたかのような凹地と立入坑のような閉塞した坑口が一つありました.

 

立入坑のような坑口.

 

露天掘りしたような跡と奥に崩れた坑口がありました.ここも少し何かないか探しましたが,鉱石は下のズリで見られました.

 

 このあと,下に降りて,林道を詰めていきました.林道終点より少し上に通洞坑があって,こちらは大間歩坑.上の方は時間の都合で行きませんでした.筆黒谷沿いに転石でちらほら鉱石が見られるので,下流の河原でどういう鉱石があるか観察しました.

 紅殻山鉱床の鉱石は磁硫鉄鉱と閃亜鉛鉱で塊状に近いものがありました.大間歩坑のものは変質した凝灰岩中の熱水鉱脈で,粘板岩質岩を切るものもありました.以下確認した鉱物種です.

 

 閃亜鉛鉱(ほとんど鉄閃亜鉛鉱,まれにベッコウ亜鉛がある)・磁硫鉄鉱黄鉄鉱(鉱石だけではなく,母岩中にも普通に見られた)・方鉛鉱(少ない)・黄銅鉱(稀)・二酸化マンガン鉱褐鉄鉱石英(鉱山では大量にある鉱物だが,ここではほとんど見られなかった)・方解石・(母岩を脈で切っているものが多く,一部は短波紫外線で赤色に蛍光するものがあった)・苦灰石(稀.空隙に菱餅形の結晶を見るものがあった)・アンケル石―クトナホラ石系鉱物(菱マンガン鉱からなる石に黄橙色―灰白色塊状で伴われる).菱マンガン鉱(表面を二酸化マンガンの被膜で覆われる.凝灰岩中の脈で入るものもあった)・孔雀石(稀)・水亜鉛土(皮膜状で閃亜鉛鉱の割れ目にうっすら入っているものがあった.チップをサンプリングし短波紫外線で青白く蛍光した.)・石膏(鉱床とは直接関係の無い母岩の割れ目にも普通に含まれていた)・鉛鉄明礬石?(方鉛鉱の表面をうっすら被膜する産状だった)・ばら輝石緑泥石など.

 

一例です.

方鉛鉱.暗褐色の緑泥石を含み暗灰緑色を呈する母岩を切る脈中より産した.黒色亜金属光沢の閃亜鉛鉱を伴う.褐色は酸化被膜.

 

菱マンガン鉱.中央右の淡紅色の部分.右上の方に濃い赤色の部分があって,ばら輝石でした.平林 武(1911):亜鉛鉱鉱床調査報文 第一回,農商務省鉱山局,202総ページ,に脈石鉱物として「ばら輝石」があると記載がありました.見たときは半信半疑でしたが,実際にありました.産状から見るとばら輝石の部分はパイロクスマンガン石のような気がするのですが,分析していないので「ばら輝石」としました.

 

 

 このあと,帰途に就きました.何を考えたのか敦賀市内から琵琶湖に抜けて京都市内を経由して帰った.案の定,ひどい渋滞に掴まって,往路以上に辛かった.湖西道路の和邇で降りて途中越を通ればよかった.帰りは5時間近くかかった.

 

 


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