研磨石
いくつかの研磨した石292
奈良県五條市西吉野町夜中・平沼田 大和鉱山の含銅硫化鉄鉱を一面研磨しました.鉱山訪問記は前々回を参照にしてください.前出のズリから零れたと思われる,林道の脇の土砂の中から一つ得た鉱石質の石です.成形したところ半分以上が腐っていて,含銅硫化鉄鉱と母岩の境界が結構ボロボロでした.元のサイズの十分の一の大きさになって,さらに腐ってきそうな部分も多くあったので,裏面を一面研磨しました.いつ硫酸を吹いて分解してくるかもしれず,とりあえず重曹で焚いて水洗いしました.
(研磨) 含銅硫化鉄鉱と母岩の境界がボロボロで,研磨中に分離するのも承知で研磨を始めました.盤際から母岩の石英の部分が多く占める石で,非常に磨りづらいかと思っていましたが,案外簡単に上の画像の程度まで削れてくれました.母岩と含銅硫化鉄鉱の境界は研磨中にボロボロ崩れて,空隙のようになってしまいました.母岩は石英脈なのに簡単に削れるのを不思議と思ってルーペで観察したところ,石英質と思っていた部分は蝋石質になっていて一部はセリサイトのような鉱物が層理に充填していました.これなら早く仕上がると踏んで一気に磨り上げました.
中研ぎに豊岡層群の砂岩でしました.目がある程度細かく揃っているので,中砥ぎにはちょうど良く,中研ぎに使用しています.
仕上げは青砥でしたところ光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
含銅硫化鉄鉱と母岩の境界がはっきりしています.主に黄鉄鉱からなっていて,灰色―暗灰色の部分は石英のようです.
銅は含まれていないのなら単なる硫化鉄鉱になってしまいますが,拡大していくとちまちま黄銅鉱が含まれていました.
黄銅鉱と閃亜鉛鉱と黄鉄鉱が含まれる部分で,比較的大きな部分を見つけたので,さらに拡大しました.
閃亜鉛鉱や黄銅鉱を含む部分で盤際に近い部分に入っていました.
以下は母岩が多く占める部分の拡大です.
珪質の結晶片岩の拡大です.
含銅硫化鉄鉱と母岩との境界付近の石英脈.細かい黄鉄鉱が含まれていました.
珪質の結晶片岩の中にも拡大していくと,ちまちま硫化物が入っていました.
めっちゃちっさい.劈開と色と光沢から閃亜鉛鉱のようです.
こちらも閃亜鉛鉱かと思っていたら,劈開が微妙で光が通る感じが無いので,黄鉄鉱から変質した桝石のようでした.