顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真180
シルヴァニア鉱
産地:Emperor mine, 22km SW of Tomanivi mountain, Vatukoula,
Vatukoula gold field, Viti Levu island, Fiji.(非売品).
Sylvanite シルヴァニア鉱(シルバニア鉱)
[組成] AgAuTe4
[結晶] 単斜晶系.庇面と柱面からなる短い角柱状・分厚い板状・刃
状・円柱状・針状・粒状・骸晶など.結晶は脆い.反復双晶が
知られている.短冊状・簾状・放射状・樹枝状集合などにな
る.
[色] 銀白色・鋼灰色・帯青鋼灰色・帯黄銀白色など.錆びると虹色
を帯びたり,褐色に変色する.
[光沢] 金属光沢.
[モース硬度] 1.5~2
[比重] 8.16
[劈開] {010}1方向に完全.
[条痕] 銀白色.
[原産地] Baia de Arieș, Alba county, Romania.
[名称] 最初に発見されたトランシルヴァニア地域
(Transylvania region, Romania)より.
ほか,塩酸に不溶.加熱後に常磁性.熱水金銀鉱床に産し,自然テルルと共生することが多く,自然金や自然銀とは共存しない傾向にあるらしい.
ほぼ1か月振りとなりました.顕微鏡写真シリーズです.普段は双眼実体顕微鏡で,撮影しているのですが,顕微鏡が店にしかないので,所有している標本を持ってきて撮影しなければならず,今回,標本を整理してて出てきましたので,掃除したうえで顕微鏡撮影しました.
文頭の標本は自然テルルの回でも紹介したEmperor mineで産したシルヴァニア鉱です.保存が悪かったのかあるいは母岩が腐っていたのか,硫酸鉄を吹いていて異常に汚らしかった.小ハンマーで軽く撫でるようにしたところ簡単に母岩が分離して,方解石を伴う黄ばんだ石英が残りました.方解石が一面についていて,細かい銀白色の鉱物が見えるものの,はっきりとしなかったため,塩酸で軽くエッチングしました.いつもなら溶けている様子を見ながら適当に引き上げるのですが,今回は放置していました.
母岩の大部分を覆っていた方解石が無くなり,細かい水晶の上に初めついていた銀白色の鉱物よりはるかに粒の大きい結晶がちらほら見えていました.
元ラベルにシルヴァニア鉱と付いていたのですが,方解石を溶け去ったため,表面にあったシルヴァニア鉱は流れたかと思っていましたが,方解石の下から上のような立派な結晶が出てきました.
母岩はやや珪化した凝灰岩質の岩石でそれを切る石英脈に伴って方解石などの脈石を含んだ部分に,微細な黄鉄鉱と自然テルルがついていました.
その裏面に目をやると,短冊状の結晶の集合がついていました.
短冊状の集合.一部に自然テルルを伴っています.
短冊を構成する1本1本がよく見ると刃状の結晶で細長い板状になっていました.
シルヴァニア鉱は銀(Ag)金(Au)テルル(Te)という,ありがたい金属元素で構成されています.以前まではカールグーリーやクリプルクリークの標本を持っていたのですが金欠で放出しました.代わりに購入したのが上の標本でした.パソコンのマウスくらいの大きさの母岩であまりに大きいので,小割して3つの標本に分けました.これとほかにクレンネル鉱と自然テルルの標本にしています.売り手から「金もついているよ」と聞いていましたが,この石にはほとんど入っていませんでした.
以下は国産品です.
産地:静岡県下田市須崎 須崎鉱山(非売品)
自然テルルと一緒に入っているとかで,手を出したのはいいのだが,しばらくどの部分を指すのかわかりませんでした.にわかに黄色味を帯びた陶器質の石英脈に沿う金属の脈に入っていて,当初に矢印で指示してあった部分を拡大しました.
産地:静岡県下田市蓮台寺 河津鉱山(非売品)
河津鉱山のシルヴァニア鉱という触れ込みで入手した標本です.一応赤色の鉛筆で丸がしてあった部分を拡大しています.かなり微細なものですが,なんとか輪郭のようなものを撮影できました.関東地方のコレクターには有名な産地ですが,西日本にいる筆者は学生時代に1回しか行ったことが無いので,詳しくは知りません.
この標本にエレクトラムが含まれているとかで,顕微鏡で探しましたが,見つかりませんでした.どこかの微細な割れ目とかについているのかもしれません.