顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真174
―マンガノ海王石―
産地:Poudrette quarry, Mont Saint-Hilaire, La Vallée-du-Richelieu RCM,
Montérégie, Québec, Canada.(非売品)
Manganoneptunite マンガノ海王石
[組成] KNa2Li(Mn2+,Fe2+)2Ti2[O2|Si8O22]
[結晶] 単斜晶系(単斜完面像).単斜柱状・角柱状・板状・
長板状など.短冊状集合などになる.結晶は脆い.
[色] 淡黄色・黄色・黄橙色・黄褐色・橙色・赤色・深赤色・
赤褐色・黒色など.
[光沢] ガラス光沢.
[モース硬度] 5~6
[比重] 3.23
[劈開] {110}に完全.
[条痕] 淡褐色.
[原産地] Maly Mannepakhk mountain, Khibiny massf,
Murmansk Oblast, Russia.
[名称] ローマの海の神に因み,Neptuniteと称された鉱物の
マンガン置換体のため.
以前の名称はMangan-neptuniteであったが,2008
年にIMAによって Manganoneptunite に変更された.
前回のコンドロ石の次はマンガノ海王石にしました.
先日整理をしていたら古いラベルが付いて半分以上母岩が腐った石が数点出てきました.
モンサンチラール(Mont St-Hilaire)の石で,母岩が粉末状のドーソン石だったらしくボロボロになっていました.もともと拳サイズの石でしたが,5~6個の小片に分かれていました.表面がセメント状の物質で汚れたようになっていたので,軽く希塩酸で掃除しました.
ラベルはカタプレイ石と菱マンガン鉱とエジリン輝石が表題で,下の方に手書きでマンガン海王石とセラン石が記入されていました.セラン石は柱状のピンク色の鉱物で本邦でも産出が確認されているので,判別は比較的楽でした.
菱マンガン鉱は自形はしているのですが,結晶内部まで黒色針状のエジリン輝石の結晶が貫いていて,また表面に飴色の六角板状のカタプレイ石がロゼット状の集合をしたものがペラペラついていました.
マンガン海王石はそれらの粒間にオレンジ色をした粒状や板状で含まれていました.いずれも小さなものなので,菱マンガン鉱やエジリン輝石のようにパッとみてわかるような大きさではありませんが,母岩の長石の上や方沸石の上に乗っているとよく目立ちました.
母岩はボロボロなので,素手でとれる部分はそのまま取って,軽く水洗いしガラス蓋つきのケースに入れ直しました.菱マンガン鉱の自形のついている部分はミネラルタグで固定し,菱マンガン鉱とカタプレイ石の標本にしました.その際にはじめの2枚を顕微鏡下で撮影しました.
1枚目の画像は中央の短い角柱状の赤橙色がマンガノ海王石です.すぐ右に接する淡い黄色のガラス光沢の鉱物はカタプレイ石です.
2枚目の画像は別の部分についていたマンガノ海王石です.周囲の白っぽい部分は希塩酸で発泡して溶けたため,何かの炭酸塩鉱物だろうと思います.小さすぎて判別できませんでした.背後の透明の鉱物は曹長石です.
これを更新するにあたってほかの産地の標本を探したところ,もう1産地の標本が出てきましたので,顕微鏡写真を撮りました.
産地:Point of Rocks quarry, 1Km Western of Point of Rock messa mountain,
Springer, Colfax county, New Mexico, USA.(非売品).
もう1産地は,以前に顕微鏡写真シリーズのヴィリオム石の回で使用した標本についていたマンガノ海王石です.全体的に暗褐色のエジリン響岩という火山岩中に,小さなスポットとしてちょこちょこ入っていて,赤紫色のヴィリオム石を含んでいました.鮮やかな赤色で板状をしているのですが,すべて劈開で割れていて結晶は観察できませんでした.