石の話
山宝鉱山の磁鉄鉱
最近,昔サンプリングした石がちょくちょく見つかって,その都度に掃除しています.その中の一つです.10年くらい前の布賀の巡検の時にズリの一番下の方で粒の粗い磁鉄鉱塊を見つけました.粒間に粗い方解石が充填していて,塩酸で炊いたら結晶が出てくるだろうと思って,少量サンプリングしていました.
パックに入れて保存していたのですが,時とともに硫化物が分解していて,中に入れていた簡易ラベルが腐食してボロボロになっていました.ボロボロになったラベルは破片をつなぎ合わせて,何とか読める状態にして,山宝鉱山と読めました.
磁鉄鉱の表面は硫化鉄が分解して硫酸鉄のようなものが吹いていて,ここを先ず斫りのハンマーで大きく削り取りました.方解石の方は特に分解していませんでしたのでそのまま残しました.一緒についている黄銅鉱はどういうわけか分解しておらず,錆びて黒くもなっていませんでした.
「酸で炊いたら黒ずんでしまうんだろうな~」と思いつつも,方解石の中から磁鉄鉱の結晶が出てくるかもという期待の方が大きくて,成型したのちに,塩酸で処理しました.
浸けておく時間は,いつでも取り出せるように,石の反応を見ながら,溶かしました.一緒についている黄銅鉱は一番に錆びそうでしたが,この産地のものは希塩酸では錆びないらしく,光沢の強い黄銅色金属光沢をしていました.
表面についている方解石の大部分が溶け去ったところで,一度塩酸から取り出して,水洗いし風乾させました.水洗いしているときに,細かい破片がポロポロと出て,これが無くなるくらいまで磨いて,乾燥させました.
方解石の一部に淡黄灰色の鉱物がついていて,肉眼判定でホタル石でした.ついているとは思っていました.ホタル石のついているところは黄銅鉱の横で,すぐそばに溶け残った方解石があり,これを取り去ると母岩が大きく2つに分かれていまいそうなので,こちらの方はこの後の酸処理の時に,外へ出していました.
だいたいの粗い方解石を産で処理し,再び水洗いしました.その後に,熱重曹液を作って,そこに浸けて中和させました.これも長いことつけておくとものによって,金属鉱物が錆びてしまうことがあって,見ながら適当に引き上げました.
よく水洗いし束子でこすって取れそうな破片を洗い流し,外で風乾させました.
2度の塩酸で処理した磁鉄鉱塊.多少の方解石が残っていますが,すべて溶かすと母岩がボロボロになりそうなので,中途半端で留めています.
粗い磁鉄鉱塊の粒間を埋めていた粗い方解石を溶かすと,下から肉眼的な磁鉄鉱の自形結晶の集合が出てきました.特徴的な八面体ではないようで,十二面体のような結晶をしていました.
黄銅鉱とホタル石の部分.黄銅鉱は黄銅色金属光沢の部分で,塩酸で処理したのに全く錆びていませんでした.産地によって錆びる黄銅鉱と錆びない黄銅鉱があり,当地のものは錆びませんでした.画像で黄褐色~灰白色でやや光沢の鈍い部分がホタル石でした.白色部は溶け残りの方解石です.
当地のホタル石は無色・白色・淡緑色・青紫色とバリエーションに富んでいますが,空隙中の結晶は見たことありません.この石の空隙にも多少はホタル石がついていましたが,いづれも塊状のホタル石でした.
暗くなってから暗所で短波紫外線灯で蛍光させてみたところ,ホタル石はボヤーっと蛍光してくれました.方解石の部分はピンク色に蛍光しマンガン方解石だったようです.そのほかに少量の灰重石がついていました.