顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真169
―杉 石―
産地:Wessels mine, Hotazel, Kalahari Manganese field, Northern Cape
province, South Africa.(非売品).
Sugilite 杉 石(スギライト)
[組成] (K,Na)(Na,□)2(Fe3+,Mn,Al)2Li3[Si12O30]
[結晶] 自形は六角柱状および針状・粒状など.柱面に平行な
条線がある.繊維状・放射状・塊状・脈状集合などにな
る.
[色] 淡黄色・灰黄色・灰緑色・灰桃色・紅色・赤桃色・赤紫
色・灰青色・青紫色など.
[光沢] ガラス光沢.(風化すると鈍くなる)
[モース硬度] 5.5~6.5.
[比重] 2.74~2.79
[劈開] 無し.または{0001}に不明瞭.
[条痕] 白色.
[名称] 岩石学者 杉 健一(1901-1948)に因む.
[原産地] 愛媛県越智郡上島町岩城島.
筆者の鉱物・岩石標本で,造岩鉱物種としてフラットボックスに50個以上収納していて,その上に日本産マンガン鉱物標本の箱が何重にも置いてあって,ほか各種金属鉱物の標本箱がさらに積み重なっていて,なかなか造岩鉱物の箱が取り出せないでいました.
最近に,収納棚の一番下にある岩石標本を出したところで,造岩鉱物標本の箱も久々に開けてみました.いつごろ購入したのか.エニグマ石やらウルヴォスピネルやらサフィリンやらがごちゃごちゃ入っていて,その端のほうに埃まみれになっていたエジル石閃長岩がありました.灰緑色でガサガサした杉石がポツポツと入っていて,一部に空隙が見られたので,「もしかしたら,結晶があるかも」と,期待して十数年ぶりに掃除しました.
掃除の際に,顕微鏡下で観察し,全体写真と拡大写真を撮り直しました.
上の標本は市場で多く出回っているWessels mine,South Africa産の標本です.実物はもっと赤っぽいのですが,どういうわけか青っぽく映りました.産地は1973年頃より,2本のシャフトで水面下のマンガン鉱床を採鉱しているマンガン鉱山とのこと.鮮やかな青色に映る部分が杉石で,赤鉄鉱やブラウン鉱からなる集合がレンズ状に入っています.
こちらは,ラベル名が「ヘノマーティン石」となっている標本の母岩で,粒状の杉石がついていた標本です.(非売品) 淡い赤紫色で粒状の杉石で,粒間に白色で微細な針状をなすペクトライトを伴っています.産地はWessels mine.
ほかの部分の拡大はこんな感じで,白色のペクトライトを伴っていました.
ラベル名のヘノマーティン石は上の方についている赤褐色―橙色の鉱物で,参考程度に購入した標本で,あまりたくさんはついていませんでした.
ほかにNSW, Austaliaの産地の標本と N'chwaning Ⅱmineの標本があるとリストに書いていたのですが,実物が出てきませんでした.
以下は前述のとおり岩城島の杉石です.
産地:愛媛県越智郡上島町(岩城島)船越 暮坂山.(非売品).
ラベルの太字がもともと筆者が書いていた字で,余白は掃除のときに書き加えました.母岩はエジリン輝石閃長岩と云っていたものが,最近になって曹長岩だったという情報があって,岩石標本もあるのですが,どちらを優先すればいいのかわからず,放置状態になっています.
灰白色―白色粗粒部は長石で,諸所に粗いところがあって,小さな空隙を伴っています.白色繊維状のペクトライトを伴っていて,少量の短波紫外線灯で青く蛍光するバラトフ石を含んでいました.
以下は顕微鏡下での拡大写真です.
割れていますが,長柱状の輪郭が観察できる部分の拡大です.白色繊維状のペクトライト,黒色で微細な針状のエジリンを伴っています.
こちらは粒状の杉石を含む部分の拡大です.白色繊維状部はペクトライト.緑黒色―黒色の粒状・針状部はエジリン輝石です.
顕微鏡で長石の空隙をくまなく観察していたところ,柱状の結晶が1本だけありました.新鮮なようで,淡い黄色―緑色ガラス光沢を呈する柱状をしています.この写真はかなり拡大していて,実物の大きさは,直径約3㎜の晶洞内にありました.