顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真162
―石 英―
産地:Collier Creek mine, Mt. Ida, Montgomery county, Arkansas, USA.
(非売品)
Quartz 石英
[組成] SiO2
[結晶] 三方晶系・六方晶系.自形は六角柱状.形態によって
名称がある.
[色] 本来は無色.色彩によって名称がある.
[光沢] ガラス光沢.
[モース硬度] 7
[比重] 2.65~2.66
[劈開] 無し.か不明瞭.裂開が発達することがある.
[条痕] 白色.
[名称] 形態や色変わり,インクルージョンなどによって色々名称
がある.(多すぎて纏まりませんでした)
[原産地] 古くからよく知られた鉱物なので,不詳.
[同質異像鉱物] Coesite,Cristbalite,Mogánite,Seifertite,Stishovite,
Tridymite, Keatite.
ほか,化学的な諸性質はほかのWeb上のページを参照されたい.
造岩鉱物として古くから知られていた鉱物で,ようやくの登場となりました.変種の類が多すぎて纏まり切れず,どこかで区切りをつけて,実行しないとだらだら先送りになりそう.ようやく踏ん切りがつきました.
よく「水晶は鉱物の基本で,水晶に始まって,水晶に終わる」という格言にみたいなことを耳にしていました.もともと筆者は水晶には興味が無いほうで,鉱物の世界へは化学から入っていて,初めて採集に行ったのがマンガン鉱山で,初めて入手した鉱物が黄鉄鉱と緑鉛鉱でした.
やり始めてから水晶に向くことがほとんどなく,いろいろ金属ヤマへ行っていたら,脈石として大量の石英があって,そこから徐々に興味が出てきました.
興味といっても,それはほかの採集意欲のそそる金属鉱物や稀産鉱物等を当てるための指標にしていただけで,水晶というラベルを付けた標本にしたことはほとんどありませんでした.
それでも野外で観察するときに「こういう形態の石英がでてきたら,こういう鉱物が出るかも」という経験則を得るようになって,脈石のことが多いのですが,サンプルとして取っておくようになって,ようやく石英という名前のついた標本を作るようになりました.
標本の名前を付けるとき,ある一定の鉱物の集合のうち,有色鉱物と無色の鉱物に分けて,石英を除外しながら消去法で消していく方法を以前から取り入れていました.現場で「この石は珪酸分(石英)が多く粗粒(空隙があって細かい水晶が見える)だから,金銀鉱物は来ないだろう」とか,多金属鉱床で「煙色で緻密な石英から粗粒の石英に変わって盤際に緑泥石がきてる.ビリひだ」と見当が付けることが出来るようになりました.
ここ最近は石友の影響で色付きのものや,大きな結晶のものも蒐めるようになりました.石英は色々な鉱物を運んでくる鉱物なので,形態や産状を知ると視野が広く,いやヤマを張りやすくなる鉱物です.
はじめの標本は有名はアーカンサスの水晶です.結晶が大きくシャープで光沢も強いいい感じの水晶です.
以下は国産品です.いろいろな産状のものを蒐めていたら収拾がつかなくなりそうで,代表的なものを掲載します.
産地:京都府京丹後市峰山町大呂.(非売品).
普通の石英です.案外,一色の白色になった石英が少なく,ある意味国産では貴重かもしれません.黒雲母花崗岩中の脈性ペグマタイトより産しました.
産地:京都府宮津市奈具海岸.(非売品).
花弁状に集合した水晶で,「花水晶」というラベルが付いていました.ミアロリティック花崗岩の晶洞から産しました.
産地:大分県佐伯市宇目 木浦鉱山駄ヶ峠.(非売品).
日本式双晶.表面に細かいスコロド石が乗った日本式双晶です.ずいぶん前に知人と坂越の金を交換に出したところ,「何がほしい?」と問われたので,「木浦のスコロドが欲しい」と返したところ,「あんなんが,欲しいの?」って帰ってきて,肉眼的な立派にスコロド石が来ました.そのスコロド石の晶洞の空隙に座っていたのが,この日本式双晶です.同じ空隙に放射状の亜砒藍鉄鉱がいて,成形し直したところ,いい感じの標本になりました.ハート型の結晶が石英で,表面の黄色と下の方にややルーズな結晶がスコロド石です.
産地:京都府京丹後市網野町掛津 琴引浜(非売品).
高温石英です.以前に当ブログで紹介した写真を転載しました.小さいですが,透明感のある光沢の強い結晶です.
産地:京都府京丹後市網野町七竜峠.(非売品).
流紋岩中のメノウです.日本海を望む展望台になっている七竜峠から久美浜側へ少し歩いて下って行ったところの路面にパラパラ落ちていたメノウです.母岩の裏側に繊維状のモルデン沸石を伴っています.
産地:石川県小松市 遊泉寺鉱山(非売品).
紫水晶.これは購入品です.尾小屋と似たような鉱床で,裏面に重晶石を伴っています.古い地形図に旧掘跡が掲載されていて,それを手掛かりに引き込み線の終点まで行ってみたものの,よくわかりませんでした.
産地:岐阜県中津川市蛭川田原区.(非売品).
両錐の煙水晶です.購入品です.一部にクッシー面が付いてるといわれましたが,よくわかりません.長さは30mm程度ですが,照りが良く真ん中に裂開が走っている以外は文句のつけようがありませんでした.表面に薄っすら玉滴石が付いているらしく,短波紫外線で黄緑色に蛍光しました.母岩は曹長石です.
産地:栃木県鹿沼市大洋砕石.(非売品).
紅水晶.関東のコレクターと交換したときに,クトナホル石が付いた石があって,ばかみたいな大きさでその一部に空隙になった部分がありました.そこだけを成形して分けていました.共存する石英が俄かにピンク色を帯びていて,下地になっている菱マンガン鉱かなにかがすけて見えるんだろうと,思っていました.
のちにペグマタイト鉱物の蒐集家で著名なA氏に見てもらったところ,「紅水晶だろう」という回答を得て,ラベルにそう付けました.よく見ると,水晶の盤際は黒色の珪岩で,水晶と珪岩の間には菱マンガン鉱のようなピンク色の鉱物は見当たりませんでした.また,多少くすんだような感があって,ビーズ類にあった「スターローズクォーツ」に質感が似ていました.
産地:京都府京丹後市網野町七竜峠.(非売品).
俗に赤玉と呼ばれる碧玉の一種です.これも七竜峠から久美浜側に向かって歩いているときに道路の脇で拾いました.表面がひどく汚れていたので,酸を使用して洗ったところ,こんな感じの赤玉になりました.一部に赤紫色の部分があって,赤鉄鉱の微細な粒が濃集していました.母岩は流紋岩です.
産地:滋賀県大津市葛川坂下町 坂下鉱山6号坑(非売品).
赤白珪石.丹波帯の堆積岩中に胚胎する層状マンガン鉱床です.文献に出ていたので行ってみましたが,マンガンの鉱物はさほど無く,傍にあった赤白珪石をサンプリングしました.水にぬらさずにこれだけの発色があって,サイズもちょうど75㎜×60㎜の大きさなので,標本にしています.
産地:石川県白山市白峯桑島.(非売品).
正珪岩を構成する石英です.丸い礫ではなく,割り出して標本箱サイズにしてあったので購入した標本です.比較的目の揃った石英粒で構成されていました.
産地:長野県茅野市宮川安国寺 宮川鉱山(非売品).
蛇紋岩および橄欖岩中のという謎の産状の石英です.ふつう橄欖岩や蛇紋岩中に石英が併入すると,石英と母岩の境界に反応物として滑石が出来るのですが,この石にはそれがありませんでした.石英は淡褐色の部分で,黄色や黄褐色の部分は蛇紋石系の鉱物でした.この石はニッケルを含む橄欖岩および蛇紋岩中のレンズとして産したものだそうです.面白い産状です.
宮川鉱山の石英を顕微鏡下で拡大写真を撮りました.淡黄色―灰白色が石英で,黄色―黄褐色部が蛇紋石系鉱物です.黒色部はネオジム磁石で若干反応があり,磁鉄鉱のようなスピネル族鉱物のようです.蛇紋石系の鉱物だけでなく,石英中にも含まれているので,どちらが先かは判別できませんでした.