顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真157
―菫 青 石―
産地:宮城県柴田郡川崎町本砂金安達.(非売品)
Cordierite 菫青石(Iolite,Dichroite)
[組成] (Mg,Fe2+)2Al3[AlSi5O18]
[結晶] 直方晶系.自形は柱状.双晶によって擬六角柱状になる.
塊状集合などになる.結晶は案外脆い.
[色] 灰白色・白色・灰黄色・黄褐色・暗黄褐色・赤色・赤褐色・
帯緑褐色・灰青色・鮮青色・青紫色・赤橙色・灰褐色など.
見る方向によって濃青色~灰褐色に変化.
[光沢] ガラス光沢.
[モース硬度] 7~7.5
[比重] 2.6~2.66
[劈開] 無し.裂開があるという.
[条痕] 白色.
[名称] Franceの地質学者で鉱山技術者の
Pierre Louis Antoine Cordier(1777-1861) に因む.
[原産地] Groβer Arber, Bayerisch Eisenstein, Regen district,
Lower Bavaria, Germany.
チッペ石の次は菫青石にしました.本邦ではけっこう普通の変成鉱物で,産地の多いので,今回は国産標本にしました.産状は広く,火山の軽石の中や,熊野酸性岩類・接触変成岩・広域変成岩などから産します.
上の標本は軽石層の中から得られた菫青石で,鮮やかな青色ないし青紫色で透明度も強く,また結晶しているので,トップに持ってきました.
産地:茨城県日立市大雄院 日立鉱山(非売品).
次が研磨石シリーズで裏面を研磨した日立鉱山の菫青石です.広域変成岩中に鮮やかな青色の部分と青紫色の部分が入っています.周りの鱗片状は雲母類です.
産地:広島県庄原市西城町平子鉱山(非売品).
暗緑色ないし灰緑色の花崗岩質の脈岩中に入っている菫青石です.結晶内部に赤鉄鉱のような微細な鉱物を内包していました.
産地:岡山県久米郡美咲町柵原 柵原鉱山中央竪坑.(非売品).
こちらも研磨石シリーズで裏面を研磨しました.鉱山稼業時の古い標本とのことで,坑内より産したと伺っています.直閃石菫青石ホルンフェルス中の菫青石です.灰緑色ガラス光沢部が菫青石で,周囲の繊維状部が直閃石です.直閃石は変質すると滑石になるようで,研磨のはじめは軟らかいので楽でした.
産地:栃木県日光市足尾町小滝川(非売品).
こちらは泥質ホルンフェルス中の菫青石です.変質が進むと桜石になるのでですが,この石はまだ菫青石を残しています.六角の上で白く光っているように見えるのは雲母類です.
産地:福井県三方郡美浜町新庄浅ヶ瀬 耳川(非売品).
数年前にサンプリングした標本です.三方五湖近くの北前川の桜石と同じ外見の菫青石です.結晶表面は雲母類に覆われているものの,内部は菫青石が残っていました.暗灰緑色の結晶内部の金属鉱物部は黄鉄鉱です.
産地:山梨県南都留郡道志村竹之本 道志川(非売品).
現場は道志村の役場の前の川原だとか.転石の表面を鏡面研磨したものを知人より頂戴しました.暗灰緑色~灰色でガラス光沢を呈し,輪郭のはっきりとした菫青石です.
産地:鹿児島県鹿屋市花岡町花岡鉱山(非売品).
学生時代にサンプリングした菫青石です.本来はタングステンを探しに行ったのですが,炎天下の中の巡検ではかどりませんでした.タングステンの付いている石英脈のほかにいくつか周辺岩石をサンプリングしていて,そのなかに上の石がありました.優白色の部分を含み斑状になったホルンフェルスで,研磨すると深い青色の菫青石と確認できました.
産地:福島県耶麻郡西会津町奥川飯根弥生 久良谷林道(非売品).
購入品です.桜石になりかけの菫青石とのことです.母岩を切る脈に黄鉄鉱を含んでいる他は菫青石だけ含まれていました.
つぎは「桜石」です.六角柱状の菫青石が白雲母や緑泥石に変質したもので,本来は白雲母や緑泥石の項で紹介すべきものかと思っていたのですが,菫青石の仮晶なのでここで取り上げることにしました.
おもに粘板岩や泥岩などの泥質ホルンフェルス中に産し,その風化部で結晶内部が変質し白雲母や緑泥石になり,断面が桜の花弁のようになったもの.
桜石の産する粘板岩は近くにマンガン鉱床を包有していることが多く,マンガン鉱床が無い花崗岩のとの接触帯には少ないか無い傾向にあるようです.菫青石が出来るには,主成分のマグネシウム(Mg)が必須で,接触変成を受ける前の泥質岩に豊富に含まれていないとできないことになります.マンガン鉱床は海底熱水鉱床の名残で,海水中の苦汁はそこから来ているそうで,マグネシウム分に富んだ塵が海底に積もり,堆積し泥質岩となったものに花崗岩などの熱源と接触してできたとしたら,うまく説明できるかもです.
本来は古来有名な稗田野(稗は,草冠が必要なのですが,どういう訳かパソコン上で表示できない)の桜石を紹介したいのですが,ほかのWeb上のページでたくさん掲載されているため今回は割愛しました.
産地:京都府綴喜郡井手町上井手玉川(非売品).
6~7年くらい前にサンプリングした桜石です.当時は工事をやっていなくて,以前の株山橋の下でサンプリングしました.かなり黒いホルンフェルスの中に入っていて,当地のものは白雲母に変質していました.
産地:京都府京都市左京区浄土寺小山町 団地造成現場(非売品).
ずいぶん前に知人より頂戴した標本です.京都で有名な観光名所の銀閣寺の門前辺りで団地の造成工事をやったときに出た古い標本だそうです.
「ぼたん花状桜石」と仰ってて層理のややはっきりした粘板岩中に挟まっていました.
産地:三重県三重郡菰野町菰野 宗利谷.(非売品).
こちらは菊のような桜石です.湯の山鉱山を探しに行ったときに,堰堤の上で一つ拾いました.谷の南の尾根を越えた南にマメドチ谷があってこちらでも桜石がでました.マメドチ谷の桜石は他の産地のものと同様の六角でしたが,ここのものは少しいびつで,菊の花のような感じでした.