蒸し暑いなか山にも行けないので,最近入手した標本を整理していました.
この標本の中で,名前の付けにくい石がいくつかあり,また硫化が腐って吹き出物で満たされたような半ば廃棄に近いようなものもあって,硫酸抜きや錆落としなどをしていました.
その中で最も手を焼いた石があって,塊状のペグマタイト中に小塊状の硫化を含み表面にカビのような含水硫酸塩を吹いていた.アルカリ溶液でしばらく洗い流し,表面にこびりついた二酸化マンガンの染みを過酸化水素で少し落とした.割れ目についていた燐灰ウラン鉱や燐銅ウラン鉱はたわしでこすった時にとれてしまったようで,洗った後の蛍光反応はなかった.
このペグマタイトの長石の部分には長さ約3mmのコルンブ石様鉱物がついていて,ラベルの名前もこれだった.黒色板状の結晶が長石内に埋もれている.長石は鉄に汚染されている所為か黄褐色を呈し,汚染されていない部分は灰白色で内部に黒色の細かい鉱物を含んでいる.
問題の石は,汚い長石が溶脱されて穴が開いた部分にあった.
顕微鏡写真.穴のまわりの黄褐色部が鉄に汚染されて黄色くなった長石.ほかほとんどのガラス光沢の部分が石英.球の大きさは1mm内外.
空隙の中に緑色~灰黄色の球状集合体が確認できるだけで3個.ほかの茶褐色の部分は水酸化第二鉄の鉱物だろう.
更に拡大すると緑色の部分は灰黄色の球状部の上に緑灰色の球状集合体が乗っかっていることが分かった.
穴は燐酸分で溶けているようで,表面の緑色部は予想ではベラウン石,
下の灰黄色は皆目見当がつかない.予想が合っていればキドウェル石か,
最悪水酸燐灰石に落ち着くだろうと思っているが,試料が少なく分析にも
まわせない.
ひとまずラベルにあった通りの「コルンブ石」にしておいた.
母岩のまわりはこの穴のほかに幾つも水酸化鉄の染みを伴った汚い穴が幾つも空いていて,一部には未分解の黄鉄鉱もついていた.
一通り掃除して,これでしばらくもつだろうと少しほっとした.いずれにせよ次第に色が悪くなってくるものが多かったので,無事にもってくれればと思っている.
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