顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真150
―ヤコブス鉱―
産地:Långban mine, Långban ore district, Filipstad, Värmland county, Sweden.
(非売品).
Jacobsite ヤコブス鉱
[組成] Mn2+Fe3+2O4
[結晶] 立方晶系.自形は八面体.八面体を基調とし
た立体.粒状など.本邦のものは結晶は未確
認とのこと.脈状や塊状集合などになる.
[色] 黒色・鉄黒色・鋼灰色など.錆びると青色味を
帯びる.
[光沢] 金属光沢~亜金属光沢.
[比重] 4.76~5.03.(4.99になっている文献もあ
り.
[モース硬度] 6
[劈開] 無し.
[条痕] 黒色.
[原産地] Jakobsberg mine, Jakobsberg ore field,
Nordmark district, Filipstad, Värmland,
Sweden.
[名称] 原産地名より.
ほか,強磁性など.
今年はじめの顕微鏡写真は,ヤコブス鉱にしました.けっこう普通の鉱物なので海外産を用意したいと思って,ずっと後になってしまいました.いろいろ探してはみたのですが,大きな結晶があまりなく,上の写真の石は20年くらい前に購入した標本を使用しました.
方解石などの炭酸塩からなるスカルン系の母岩で,磁性を磁石で確認したうえで,結晶粒の粗いところを酸でエッチングして,浮かび上がらせました.風乾後に表面に出ている粒を顕微鏡で選って八面体になっている粒を探して撮影しました.粒の大きさは1mm~2mmで大きな粒ほどいびつで,小さなものほどシャープでしたが,小さすぎるのでその中間くらいの粒を撮影しました.
もうひとつ候補に挙げていた標本があって,こちらは共存するハウスマン鉱やブラウン鉱の結晶に埋もれていて釈然としないのでパスしました.
以下は国産品の標本です.海外での産出は割と珍しいようですが,本邦ではこの鉱物を産するマンガン鉱床が非常に多くありました.
産地:和歌山県田辺市龍神村甲斐ノ川小森谷 玉谷鉱山(非売品).
過去に購入した標本です.赤褐色―茶褐色のハウスマン鉱,灰桃色―淡褐色の菱マンガン鉱などを主とする母岩中に,太い黒色の脈として入っています.濃集しているようで,この脈はにわかに緑色味を帯びています.
拡大したところ.帯緑黒色亜金属光沢部がヤコブス鉱です.脈をさらに細かい白色の脈で切っていました.
産地:岩手県下閉伊郡山田町豊間根 大谷山鉱山.(非売品).
こちらも購入品です.共存する赤褐色部はハウスマン鉱と思っていたところ,アレガニー石などのヒューム石系の鉱物でした.黒色筋状の部分がヤコブス鉱.
産地:群馬県桐生市菱町塩瀬 菱鉱山(非売品).
群馬県のコレクターとの交換で入手した標本です.にわかに紫色味を帯びた赤褐色のハウスマン鉱を切る脈状をなすヤコブス鉱です.この石は磁石がぶら下がるくらいの磁力がありました.
産地:三重県いなべ市藤原町冷谷 立正鉱山(非売品).
知人より頂戴した標本です.下の方の色の淡いところはいわゆる「ガラス」で,ピンク色のばら輝石系の鉱物が鉱染しています.ヤコブス鉱はこのガラス質の部分に接しているところで,写真の上部に緑マンガン鉱が付いていました.今は完全に黒色になっています.
産地:滋賀県高島市朽木麻生柳谷 高島第二鉱山(非売品).
購入品です.黒色脈状の部分がヤコブス鉱です.母岩は褐桃色のアレガニー石や淡紅色の菱マンガン鉱・赤褐色のカリオピライトからなっています.ヤコブス鉱の脈に接していたり纏わりついている赤褐色の部分はペナント石が入っているそうです.全体的には高品位の炭マンですが,緑色の重晶石を含んでいて,鉱石にはならなかったようです.
産地:福井県大飯郡おおい町名田庄槙谷小松谷 槙谷鉱山小松谷鉱床.(非売品).
以前に研磨石シリーズで掲載した石を撮影用に再度研磨し顕微鏡下で撮影しました.にわかに紫色を帯びた母岩を切るヤコブス鉱です.周囲の赤褐色部はリッベ石が含まれているそうです.
産地:大阪府豊能郡能勢町山田石堂 石堂鉱山(非売品).
石堂鉱山を再発見したときにサンプリングした標本です.ピンク色はばら輝石で,赤褐色のカリオピライトを伴った母岩で,ヤコブス鉱は写真上部の褐色部に含まれていました.共存する灰緑色部は閃マンガン鉱です.
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明日,祝日は営業しています.