顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真116
―紅 安 鉱―
産地:Lac Nicolet mine, Saints-Martyrs-Canadians, Arthabaska RCM,
Centre-du-Quebéc, Canada.(非売品).
Kermesite 紅安鉱
[組成] Sb2S2O
[結晶] 三斜晶系(擬単斜晶系).自形は柱状ないし長柱状.毛状・放射状などの集合になる.脆い.
[色] 赤色・暗赤色・暗赤褐色.
[光沢] 金剛光沢~ガラス光沢.
[モース硬度] 1~1.5
[比重] 4.69
[劈開] {001}に完全.{010}に裂開.
[条痕] 暗赤色~暗赤褐色.
[産状] 熱水鉱床.輝安鉱ないしベルチェ鉱の仮晶として
つぎは紅安鉱にしました.以前に少し触れました.輝安鉱やベルチェ鉱の二次鉱物として比較的よく目にする鉱物です.上の標本は標本市場に出回っている現場の標本です.2本の鉱脈を突いた程度の鉱山だったようで,鉱石になるような集合は無かったようです.
別の部分の拡大.
標本内の鮮赤色針状の部分が紅安鉱で,灰白色―帯黄白色部が石英,黄色の粒状はヴァレンティン鉱などのアンチモンの二次鉱物です.
産地:Kolársky vrch deposit, Pezinok, Pezinok district,Bratislava region,
Slovakia.(非売品).
比較的最近に入手した標本です.最近は欧州の鉱物標本に凝っていて,その過程で入手した標本です.古くから有名な産地のようで,産地名をいれて検索をかけると結構な量の画像が引っかかってきました.母岩はホルンフェルスのような堅い岩石で,それを切る鉱脈中の輝安鉱がそのまま紅安鉱になったような標本でした.青色や紫色に錆びているところはベルチェ鉱で,黄色粉末状の黄安華のような鉱物を伴っていました.
紅安鉱の拡大です.
こちらは未変質の輝安鉱でした.一部にベルチェ鉱を伴っています.
以下は国産の現場の標本です.
日本国内は文献には記載があるものの,記述が古い所為もあって,現物を見たことが無いものがしばしばありました.輝安鉱やベルチェ鉱などを採鉱した鉱山はかなりの数にのぼり,紅安鉱も出そうですが,標本市場で出回っている標本は既知の有名な産地の標本に限られるようです.
産地:鹿児島県日置市吹上町平鹿倉 日の本鉱山.(非売品).
以前に紹介した画像です.小さい標本ですが,放射状になっていて見栄えがするため再掲載しました.
産地:福岡県田川郡添田町桝田 妙法鉱山(非売品).
筆者が学生の頃に訪問した際にサンプリングした標本です.2度行っていて初回はお供で,2回目は豊前桝田の駅から歩きました.風化面や母岩に近い輝安鉱脈に沿ってわずかについていた紅安鉱です.母岩は粘土を伴う石英脈です.
産地:宮崎県西臼杵郡高千穂町上岩戸 長谷旧坑(非売品).
こちらも学生のころに訪問してサンプリングした標本です.雑鉱山と記憶していて,当時から金属ばかり蒐ていたので,ベルチェ鉱の付いたこの石も残していました.表面は二酸化マンガンに覆われていて,脈石に菱マンガン鉱が含まれていました.菱マンガン鉱に挟まれる形になっているやや粗い石英脈に,柱状の紅安鉱が含まれていました.透明度が高く別鉱物かと思いましたが,紅安鉱でした.現場が高い山の中腹にあって金や銀も含まれていそうでした.