顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真102
―リヴィングストン鉱―
産地:Huitzuco de los Figueroa, Huitzuco de los Figueroa municipality,
Guerrero, Mexico.(非売品)
Livingstonite リヴィングストン鉱
[組成] HgSb4S8
[結晶] 単斜晶系.単斜柱状・針状結晶.半球状・簾状集合になる.
[色] 帯青鋼灰色・鋼灰色・鉛灰色.錆びると黒色になる.
[光沢] 金属光沢.文献によっては金剛光沢とも.
[モース硬度] 2
[比重] 4.88~5.013
[劈開] {001}に完全.{010},{100}に乏しい.
[条痕] 暗赤色・赤色.
ほか,硝酸に可溶.
つぎはリヴィンストン鉱にしました.標本を整理していた時に,ずいぶん前に購入した原産地のリヴィングストン鉱が出てきました.表面を掃除してルースに入れなおしました.上の写真はその時に撮影しました.
本邦でも,岩手県の松尾鉱山で見つかっています.黄鉄鉱を主とする素硫化鉱中に輝安鉱に似た感じで入っているそうですが,超の付く稀産だそうで,筆者のところには回ってきそうにありません.松尾鉱山は標高の高い尾根付近にあった硫黄鉱山で,本邦有数の規模があったそうです.そういうところに出ているので,硫黄の蒸気圧の高いところで,比較的低温条件で産しそうです.
中央構造線沿いのいくつかの水銀鉱床に,輝安鉱を産するところがあって,よくよく調べたらこの鉱物だった,ってこともあるかもしれません.
上の標本は原産地標本だそうで,大枚をはたいて購入した覚えがあります.
Huitzucoという町の中心から南西へ行った谷筋が原産地のようで,航空写真を見てると,それらしき遺構が確認できました.
写真の上の方についている輝安鉱のような針状結晶がリヴィングストン鉱です.辰砂を伴っている標本もWeb上で見られるのですが,この標本は辰砂は付いていませんでした.結晶のどこかを顕微鏡的に置換しているかもしれませんが,肉眼的にはわかりませんでした.
光沢の強い針状の鉱物がリヴィングストン鉱です.上の方に分解物か,黄色い粉を吹いていました.リヴィングストン鉱の形をそのままに変質したセルヴァンテス石という鉱物が分解物としてあるそうです.
こちらは標本の裏面についていたリヴィングストン鉱です.簾状の集合をしています.
別の産地の標本をもう一つ.
産地:Khaidarkan Sb-Hg diposit, Batken region, Kyrgyzstan.
辰砂の回で少し触れました.当時は輝安鉱と思っていましたが,元ラベルが出てきて,リヴィングストン鉱と判りましたので,採録しました.赤いところが辰砂で,一部に自形もあって標本全体に含まれています.リヴィングストン鉱はその間に,暗鋼灰色金属光沢を呈する柱状が確認できます.
別の部分の拡大です.一部に石黄のような黄色っぽい粉状の鉱物を伴っていました.こちらは分解物かもしれませんが,小さすぎて判別できませんでした.