顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真101
—デクロアゾー石―
産地:Apache mine, Radium, Burch area, Globe Hills mining district,
Gila county,Arizona,USA.(非売品)
Descloizite デクロアゾー石
[組成] PbZn[OH|VO4]
[結晶] 直方晶系.直方短柱状.葉片状集合や粉状・放射状集合など.結晶は透明ないし半透明のものが多い.
[色] 黄色・黄褐色・帯橙赤褐色・灰褐色・赤橙色・黒褐色・緑褐色・暗赤褐色・
黒色.
[光沢] 亜ガラス光沢~油脂光沢.
[モース硬度] 3~3.5
[比重] 6.2
[劈開] 無し.
[条痕] 黄色~橙色.
[原産地] Sierra de Córdoba, Punilla department, Córdoba province, Argentina.
ほかに 塩酸・硝酸・硫酸で分解.
輝安鉱の次はデクロアゾー石にしました.鉛(Pb)と亜鉛(Zn)を主成分とするヴァナジン酸塩鉱物です.Zn>Cuがデクロアゾー石で,Zn<Cuはモットラム石になります.本邦では黄色粉状のものしか産しておらず,その粉状のデクロアゾー石を採集しようと,学生の頃に下宿から比較的近いところにある遠賀郡岡垣町の三吉野鉱山に行っていました.採集したと思っていましたが,初成の鉛や亜鉛は出てきたものの,デクロアゾー石はサンプルの端っこに少しだけついた貧弱なものしか出てきませんでした.そのごに群馬県の砕石場から褐色の光沢の強いデクロアゾー石が出てきた.現地に行くことは叶いませんでしたが,サンプルを入手しました.母岩が大きく橙色のヴァナジン鉛鉱が一面に着いた標本で,臙脂色を呈する微細な皮膜状だったため,今回は顕微鏡写真は撮りませんでした.
上の標本は以前にどこかの標本店で購入した標本です.初成鉱物の方鉛鉱が裏面に残っていて,周囲に硫酸鉛鉱や白鉛鉱の白っぽい粉状を伴った石英脈で,その近くにある母岩が腐ってできた空隙に,小さいですがかなり光沢の強い結晶がたくさんついていました.
母岩が腐ってできた空隙内を顕微鏡撮影.
板状に見える部分の拡大です.結晶の形からモリブデン鉛鉱か何かが変質したような感触がしました.
黄色っぽい部分の拡大です.
こちらは平たいそろばん玉状に見える結晶の部分の拡大です.
産地:J.C.Holmes mine,Grigo Gulch,Temporal Gulch, Wrighton mining district,
Santa Cruz county, Arizona,USA.(非売品).
別産地のデクロアゾー石です.微細なため透明か半透明かは判断できませんでしたが,より光沢の強い結晶群です.購入した時はVanadiniteヴァナジン鉛鉱と称するラベルが付いていましたが,ヴァナジン鉛鉱以外の母岩の上に結構密集してついていましたので,ラベル名を書き換えました.一緒についているヴァナジン鉛鉱は,赤色味は余りなく,黄色っぽい印象の結晶群でした.橙色で明らかに結晶の形の異なる鉱物があり,こちらはモリブデン鉛鉱(Wolfenite)でした.似た鉱物でヴォークラン石(Vauquelinite)もついていそうでしたが,小さすぎてよく判りませんでした.
以下は国産の標本です.
産地:福岡県遠賀郡岡垣町三吉野鉱山.(非売品)
前出の三吉野鉱山のデクロアゾー石.黄褐色―橙色のモコモコした集合です.この標本は前出のサンプルのうち,かなり小さなチップを顕微鏡撮影しました.
産地:福岡県宗像市山田 山田採石場.(非売品).
こちらはあとで購入した標本です.熱水の影響で変質し緑泥石の多い母岩の割れ目に,黄色の皮膜状をなしています.