顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真100
—輝安鉱―
産地:和歌山県日高郡日高川町寒川舟原 舟原鉱山(非売品)
Stibnite 輝安鉱
[組成] Sb2S3
[結晶] 直方晶系.直方柱状結晶.塊状や放射状集合になる.
[色] 鉛灰色・鋼灰色.錆びると青色味を帯びてきて,最後に真っ黒になる.
[光沢] 金属光沢.
[モース硬度] 2
[比重] 4.63
[劈開] {010}に完全.
[条痕] 鉛灰色.
ほか,塩酸に可溶.
久々の顕微鏡写真シリーズです.100号ですので何にしようかと迷った上,そのまま放置になってしまいました.海外産の標本を一番上に挙げるのですが,中途半端な標本でしたので,国産品に絞りました.
国産品は愛媛県西条市市之川鉱山の刀剣のような結晶が世界的に有名ですが,当方の所有している標本は今一つで,そのほかの産地にしました.
アンチモンの主要鉱石となる硫化鉱物の一つで,本邦からは質を問わなければかなりの産地があります.上の標本は頂戴したおおきな標本で,持って帰るのに難儀した標本です.珪化した母岩を切る石英脈中の薄っぺらい空隙に簾状の集合をなす輝安鉱です.共存鉱物に乏しくこの標本は黄鉄鉱しかついていませんでした.
(以下,顕微鏡写真です.)
産地:宮城県刈田郡七ヶ宿町七ヶ宿ダム1号トンネルズリ(非売品).以前にどこかで購入した標本です.珪化した凝灰岩質岩を切る石英脈中の空隙に産した輝安鉱です.共存する立方体をなす結晶は黄鉄鉱です.
栃木県芳賀郡茂木町青梅 茂木鉱山(非売品).こちらも購入品です.風化したのかけっこう脆い母岩中の空隙に自形結晶をなす輝安鉱です.ほぼ単一の脈のようで,二次鉱物の黄安華と少量のヴァレンティン鉱などを伴っていました.
産地:三重県松阪市飯高町森 森鉱山(非売品).中央構造線の南側にある飯高町森の在所の南西に位置する鉱山からの輝安鉱です.現場では小さいサイズのものしかありませんでした.白色の粘土様物質を伴っています.
産地:三重県北牟婁郡紀北町海山区 船津鉱山(非売品).以前に現場近くまで探しに行ったものの,行きつけなかった現場の標本で,何年か前に購入しました.鉱床母岩が付いていませんでしたので,どういうところから出たかは判りませんが,白色―乳白色の粗い石英脈中に入った輝安鉱です.この標本にも共存鉱物は少なく,黄鉄鉱が少しあるくらいでした.
産地:奈良県御所市塩家 塩家鉱山(非売品).何年か前の京都ショーで購入した標本です.脈の中央で切断され内部の構造が観察できました.切っただけでしたので,金属鉱物の低硬度を考慮して研磨しました.輝安鉱だけが極端に硬度がひくいので,集合している部分を外して研磨し,最後に高さを合わせました.乳白色~水酸化鉄で褐色に汚染された部分のある玉髄質の石英中の輝安鉱です.周辺の赤い部分は辰砂です.輝安鉱の周りにまとわりついている赤い鉱物も辰砂で,一部に黒辰砂のような鉱物も含まれていました.
産地:山口県周南市鹿野町奥大町および坂根 坂根鉱山(非売品).四国の市之川鉱山で採鉱される前は,こちらが本邦の主要産地だったという.もともと鹿野鉱山という名称で稼業されていたが,その後に坂根鉱山という名称で操業されたそうだ.標本は三郡帯?の泥質岩を切る石英脈の肥大部に濃集した輝安鉱です.こちらも目立った共存鉱物は無いようで,輝安鉱に少量の黄鉄鉱を伴った程度でした.
産地:宮崎県児湯郡西米良村天包鉱山(非売品).何年か前の京都ショーで購入しました.塊状の輝安鉱です.結晶面の出ている部分は少しはありましたが,ほぼ塊状でした.結晶にはある独特の光沢も塊状鉱には無く,ちょっと青っぽい鋼灰色の塊と云った感じの標本です.