鉱物の顕微鏡写真92
―黄 鉄 鉱―
産地:Huanzala mine,Huanzala, Huallanco, Bolognesi province, Anchach, Peru.
(非売品)
Pyrite 黄鉄鉱
[組成] FeS2
[結晶] 立方晶系.結晶は立方体.正八面体.正十二面体.菱面体.これらの結晶が集合した聚形.条線がよく発達する.ほか粒状が集合して硫化鉱と呼ばれるような塊状や芋状・ノジュールになる.
[色]:白っぽい黄銅色,黄色っぽい真鍮色.
[光沢]:金属光沢.粒の細かい集合になると若干光沢が鈍くなる.
[モース硬度]:6~6.5
[比重]:5.01
[劈開]:無し.
[条痕]:帯緑黒色・黒色.
[多形]:白鉄鉱
ほか,硝酸で分解.打撃で硫化水素の悪臭.粒が小さくても外形が出やすい鉱物.
次はごく普通の鉱物の黄鉄鉱にしました.はっきり言ってどこにでも出来る鉱物で,特に熱水変質を受けた場所なら,品質にこだわらなければどこにでもある鉱物です.産状は熱水鉱床や黒鉱鉱床・含銅硫化鉄鉱床・接触交代鉱床・層状マンガン鉱床・熱水変質を受けた岩石・広域変成岩(青色や緑色片岩)・粘板岩・温泉沈殿物・火山の噴気孔・ペグマタイトなどに見られます.比較的低温かつ,硫黄の蒸気圧の高いところに出来るようです.
しばらく放っておいたらひび割れして,白色の粉が吹いて分解してくる標本があります.巷では白鉄鉱を含んでいるためだとか言われています.
それをある博士号をもった先生に伺ったことがあることですが,黄鉄鉱は結晶内部に硫酸イオンを含んでいて,どうにかすると分解してくる.分解し始めるとなにをやっても止められないとか.
上の標本は1995年ごろに購入した標本です.購入して25年経ちますが,多少の曇りはあるものの腐ってきていません.四周がすべて結晶という感じの良い標本なので,撮影しました.産地が多く海外のものを取り上げていると,国産ものを掲載できませんので,2つだけに留めました.
産地:Atacocha mine, Atacocha mining district, Cerro de Pasco,
Pasco province, Peru.(非売品)
鉱脈鉱床からの標本です.母岩はマンガンを少量含み淡いピンク色を呈するマンガン方解石で,短波紫外線灯で赤く蛍光します.一部に鋼灰色の輝安鉱が鉱染した部分を伴っています.
以下,国産の標本です.
産地:石川県小松市尾小屋鉱山.(非売品).
購入した標本です.もとは島津製だとか.かなり古い標本と伺いました.母岩は細かい水晶で,黄鉄鉱とのコントラストの良い標本です.
産地:静岡県西賀茂郡西伊豆町宇久須鉱山.(非売品)
購入品です.熱水交代岩からの産出です.顕微鏡下で撮影するには中途半端な大きさでしたが,顕微鏡下で撮影しました.条線が発達しているのが観察できます.
産地:奈良県宇陀市大宇陀町本郷鉱山(採集品で非売品)
15年くらい前に採集した標本です.熱水変質でセリサイト化した粘土を採掘していたという現場で,粘土の中からコロコロ出てきました.それを篩いにかけて洗浄し,ピンセットで結晶の良いのを選る.たま~にサッカーボールみたいな結晶が混じっていました.ほかに石英を噛んだ石に輝安鉱がついていたり,稀に自形の硫砒鉄鉱があったり,と楽しいところでした.
産地:香川県仲多度郡まんのう町長尾 猫山鉱山(非売品)
珪線石鉱床と聴きなれないタイプの鉱床ですが,蝋石鉱床に近く,この標本も葉蝋石や紅柱石などを含んでいました.写真の石は交換で入手した標本です.どの部分が珪線石かわからないような塊状の標本で,ちまちました黄鉄鉱を含んでいました.それを顕微鏡下で撮影しました.黄色っぽい母岩の部分は葉蝋石で,珪線石はその中の白色っぽい部分でした.
産地:滋賀県高島市朽木小川 小川鉱山(採集品・非売品)
滋賀県と京都府との境界尾根の麓にある層状マンガン鉱床です.マンガンの高品位の部分にはほとんど入っておらず,この石はパイロクスマンガン石と珪岩との境界に脈として入っていた菱マンガン鉱中に含まれていました.普段なら絶対にサンプリングしない石ですが,自形がはっきり出ていて,コントラストも良かったので標本にしました.
産地:岡山県和気郡和気町竜ヶ鼻.(非売品)
現場をよく知らずに購入した標本です.付近には素硫化鉱を掘った小さな鉱床がたくさんあるらしく,当地もその一つかもしれません.近くを通った時に探してみるのですが,いまのところ全くその気配を感じ取れません.結晶はあまりしっかりと出ていませんが,一辺が2㎝ありかなり大きな結晶をしています.この石についている他の鉱物は,石英が少量伴われているほかは何もついていませんでした.
産地:京都府京都市右京区嵯峨水尾鳩ヶ巣 保津峡壁岩(非売品)
保津峡壁岩の黄鉄鉱です.露頭から含水燐酸塩鉱物のヴァシェギー石が多産したころサンプリングしました.丹波帯の堆積岩の一つ,頁岩を切る石英脈中より産しました.付近に転がっていた石は石英脈や頁岩中に黄鉄鉱が抜けたような孔が見られるものもありました.当地では黄鉄鉱やヴァシェギー石のほかに非晶質炭素物質(準石墨)や閃亜鉛鉱・燐灰石(コノドント化石が置換されたもの)・コニンク石などが見られ,自然銅もあったとか後で聞きました.
産地:大阪府池田市古江町猪名川露頭(非売品)
以前にも少し触れました.研磨石のカテゴリーのブログから転載です.外形のはっきりしたのが黄鉄鉱で,粒間に石英があり一部に黄銅鉱を伴っています.現場付近をあとで探索したところ,少し上流の鼓滝近くの川原で粘板岩中に小さな団塊で入っている素硫化鉱を見つけました.サンプリングできるような場所ではなかったので,観察に留めました.水害の後に訪問したためか,若干の水酸化鉄が被っているほかは,新鮮な面が出ていました.黄銅鉱のような共存鉱物は無く,レンズ状の硫化鉄の塊と云った感じでした.
産地:広島県福山市神辺町下竹田 狭間鉱山(非売品)
10年くらい前にサンプリングした標本です.池の横にコンクリで蓋された坑口の跡があって,現在は集合墓地になっています.スカルン化した緑色岩中に不定形塊状をなす黄鉄鉱で,共存鉱物はありませんでした.母岩の中に粘土鉱物に変質した灰鉄輝石のような鉱物は入っていました.
産地:京都府亀岡市千代川町行者山.(非売品)
行者山山頂付近の露頭とのことです.1980年代に採集されたという標本の一部で,黄色のビューダン石や緑色のスコロド石を伴っている.一部に洋紅石のような鉱物もついていましたが,量が少なく分析していません.写真の上の方に写っている鉛灰色は方鉛鉱で,この地域ではまれな鉱物です.