鉱物の顕微鏡写真88
―イドリア石―
蛍光灯下で撮影.
短波紫外線灯下で撮影.
産地:Idria(Idrija) mine, Idrija, Gorizia region,Slovenia.(非売品)
Idrialite イドリア石(アイドリア石となっている文献もあり)
[組成]:C22H14
[結晶]:直方晶系.塊状および皮膜状があるよう.
[色]:灰黄色・黄色・緑黄色など.黄色を基調とした色彩.
[光沢]:油脂光沢.鈍い.
[モース硬度]:1~1.5
[比重]:1.23
[劈開]:一方向に完全..らしいが標本を見る限り顕著な劈開があるようには
見えない.
[蛍光]:短波紫外線で青色・橙色・黄色.
長波紫外線で青色・橙色・黄色.
(本邦未産)
世界各所の水銀鉱物を探していた時に,偶然にしてIdrija mineとラベルにあって購入した標本です.水銀の鉱物と思っていましたが,有機物の鉱物と後で知りました.
なんだか石油臭い石で,母岩は粘土のようでかなり脆くルースに入れて保存しています.標本の表面にうっすらついている黄色っぽい,光沢の鈍いところがイドリア石だそうで,ルースに入れ替えるときに短波紫外線を照射したところ,かなりキレイな緑色味がかった黄色に蛍光しました.以前の回でカルパチア石を紹介しましたが,それによく似た蛍光色をしていました.もしくはリストにはカルパチア石の名前がありませんでしたが,標本内に共存しているかもしれません.
産地のIdria mineは欧州の水銀山では有名な鉱山で,文献によると1490年ごろ(もしくはもっと古く?)から操業され,最近の2009年まで稼業されたという.水銀鉱山はどういうわけか断層沿いにあって,普通の小さな断層ではなく,かなり大規模な断層の近くにある傾向があるようです.この鉱山も大きな断層の近くかもしれません.本邦では四国の水井鉱山かその周辺に出るかもしれませんが,本邦ではいまだ発見されていません.
(以下,顕微鏡下での観察です.)
中央の丸い輪郭で反射しているのが劈開か?黄色部がイドリア石です.
標本の随所に白っぽい含水硫酸鉄のような鉱物を伴っています.ややくすんだ部分が多分それと思う.黄色い部分がイドリア石.
黒っぽい黒辰砂のような鉱物を伴う部分の拡大です.元ラベルには水銀鉱物の名称は入っていませんでしたが,顕微鏡下でかなり小さい辰砂を確認しています.
緑色っぽいイドリア石を含む部分の拡大写真です.中央よりやや下方に緑色のイドリア石が観察できます.