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いくつかの研磨した石192

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いくつかの研磨した石192

 滋賀県湖南市緑ヶ丘 石部鉱山の斑銅鉱―閃亜鉛鉱からなる斑状鉱を一面研磨しました.上記の写真の標本は過去何度か当ブログにアップしていましたが,斑銅鉱がどこにいるのか判らない等の指摘があり,研磨して新鮮な面をみればわかると思って,裏側を研磨しました.

 

 石部鉱山は金山と灰山があって,灰山は各種の銅の二次鉱物を多産して有名になりました.沿革がはっきりしない鉱山で,単に石部灰山・灰山・金山鉱山とか呼ばれたりしているようです.古い文献では「石部山吹屋ヶ谷」と云ったそうだ.

 鉱山の沿革は当方で調べた限りでは,延宝3年(1675)と正徳5年(1715)に探鉱された記録があり,当時は採算が取れずに休山したという.その後しばらく休山状態が続いたようで,安永6年(1777)に再び探鉱され,約40貫(約0.15t)の粗銅を生産したという.その後にまた休山したようで,慶応2年(1866)に再び探鉱され,翌年の慶応3年(1867)に休山した.維新後は明治の初めに再興され,明治中期には採算が取れなくなり休山したそうだ.資料に因れば銅のほか鉄も生産していたようだ.古い鉱区一覧に「石部鉱山」の名前があったのは明治のころの名称かもしれない.

 私見ではあるが,当地の鉱石は閃亜鉛鉱が多く,黄銅鉱と混ざる石もよく見られるため,亜鉛が邪魔してうまく銅が吹けなかったのではないかと思う.また,山が低く,川に近いので湧水等で水準以下の探鉱ができなかったのかもしれない.

 

(研磨)母岩の部分が灰鉄輝石から,若干変質したように見えるので柔らかいと踏んで,磨り始めました.予想通り軟らかく,ものの数分で平滑に仕上がりました.仕上げは青砥で充分光沢が出てくれました.

 

(以下,顕微鏡下での観察です)

 

 

 

 

倍率約20倍で一通り撮影しました.斑銅鉱は赤銅色の部分で,明らかに黄銅鉱から変わった斑銅鉱のようです.初成の斑銅鉱なら銀分が含まれていそうですが,二次的にできた斑銅鉱には入っていないようです.共存する鉄黒色亜金属光沢部は閃亜鉛鉱.黄色っぽい母岩は外形がややはっきりしている粒状の鉱物が石榴石で.そのほかは灰鉄輝石から変わったと思われる,苦土蛭石などの粘土鉱物のようです.実際に磨った時は削るというより滑るという感じがしました.

 

斑銅鉱の拡大です.ちょっと黄銅鉱が残っているのか,黄銅色の部分が確認できました.鉄黒色部は閃亜鉛鉱.

 

 

下の方に方鉛鉱がいました.

 

斑銅鉱の一部に鋼灰色金属光沢の部分があって輝銅鉱類かもしれません.

 

石榴石の多い部分の拡大です.粒があまりはっきりしていない.

 

 

 磨ったら一応,斑銅鉱が含まれていることが判りました.亜鉛と混在していると,錆びた亜鉛と混同してしまい判別に困るのかもしれません.上の写真は磨り上げてすぐに撮影しました.空気中でただちに酸化して錆びるため,夕方ごろには錆びていると思う.

 

 

 

 

 


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