いくつかの研磨した石178
京都府京都市右京区京北上弓削町下ノ谷 下ノ谷鉱山のパイロクスマンガン石―カリオピライトからなるマンガン鉱を一面研磨しました.15年くらい前にサンプリングした標本です.裏面が一面の二酸化マンガンによる酸化被膜に覆われていたため,この面を一面研磨しました.
現場は「タジリバタノウエ」や「タキノウエ」と呼ばれる標高635.2mの三角点のある山の南東付近にありました.丹波帯の堆積岩中に胚胎する層状マンガン鉱床です.坑道はあったのか無かったのかはっきり覚えていませんが,ズリがあったようで,いろいろな鉱物を産したようなことを,当時の野帳に書いていました.
標本の元ラベルに「緑マンガン鉱」と書いていましたが,今見ると完全に酸化して真っ黒になっています.裏面磨ったら出てくるかも..と期待を込めて研磨に取り掛かりました.
(研磨) この標本で硬度がありそうなのは,パイロクスマンガン石とそれに伴う暗灰色―黒色を呈する珪岩,それからカリオピライトで,軟らかそうなのはそれらを埋めている菱マンガン鉱やテフロ橄欖石などが肉眼的に判別できました.
迷っていても始まらないのでひとまず磨ってみることにしました.硬い鉱物が含まれていましたが,案外早く磨れてくれました.
仕上げははじめ青砥でしていましたが,思う感じに光沢が出てくれず,黄色の砥石でようやく光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です.)
パイロクスマンガン石を主とする部分の拡大です.ピンク色がパイロクスマンガン石,黒っぽく見えるのが,前出の珪岩です.茶褐色の部分はカリオピライト,白色部は菱マンガン鉱です.
青緑色―青灰色を呈するテフロ橄欖石の拡大です.灰白色―白色部は菱マンガン鉱,茶褐色はカリオピライトです.
こちらはテフロ橄欖石の下の方に隣接するカリオピライトの拡大写真です.細かい白色の脈で切っていました.
カリオピライトに菱マンガン鉱を伴っている部分の拡大です.ピンク色部はパイロクスマンガン石.黒色部は裂罅に沈着した二酸化マンガンの染みです.
パイロクスマンガン石を少量含む珪岩と,茶褐色のカリオピライトとの境界付近を拡大したものです.パイロクスマンガン石を少量含む珪岩中に微化石?と思われるような痕跡がありました.いずれも小さすぎて判別できませんでした.
黒褐色のファイトクネヒト鉱を含むレンズ状の部分の拡大です.赤い筋は多少の磁力がありヤコブス鉱を混入しているようです.黒褐色の部分はもともとパイロクロアイトで,磨っているうちに内部より緑マンガン鉱が出てくるのですが,この標本からは出てきませんでした.
この鉱床からは,石墨(非晶質炭素物質)・閃マンガン鉱・黄鉄鉱・緑マンガン鉱・ヤコブス鉱・ハウスマン鉱・石英(石英・碧玉)・二酸化マンガン鉱・パイロクロアイト・ファイトクネヒト鉱・菱マンガン鉱・重晶石・テフロ橄欖石・アレガニー石・ばら輝石・パイロクスマンガン石・チンゼン斧石orマンガン斧石・ネオトス石・カリオピライトなどが見られました.