いくつかの研磨した石120
岐阜県美濃加茂市三和町川浦 一反田鉱山子安坑のカリオピライトを一面研磨してみました.当標本は11年ほど前に当方が訪山してサンプリングしたものの一部です.標本の整理中に当時サンプリングした石が出てきて成形したところ,うまくいかず裂罅に沿ってパラパラと割れてサンプルが小さくなってしまいました.そのため比較的透明度が高い部分を選んで,一面研磨のほうに回しました.先月の新春交流会での交流の一コマに「ここのカリオピライトは研磨にかけると,割れ目に沿って割れてしまいうまくいかない」という話が出ました.それならと,手持ちのサンプルで試みてみました.
↑研磨面では無い面.黒色部は二酸化マンガンの酸化被膜.
産地は美濃帯の堆積岩中に胚胎する層状マンガン鉱床で,至近距離にある牛牧鉱山のネオトス石が比較的著名です.(牛牧鉱山のネオトス石は,カリオピライトに変質しているものが多いと伺った) 訪山したのも産状を観たいと思ったからでした.遠出するのに山中を徘徊するのは,けっこう時間の無駄なので,文献(日本のマンガン鉱床補遺後篇)に掲載のある一反田鉱山に行くことに.細かいことは10年以上前なので覚えていませんが,車道の脇に坑口があり,その中からいくつかサンプリングした覚えがあります.その時のサンプリングしたものは,当方の記録によると「菱マンガン鉱」「カリオピライト」「二酸化マンガン鉱」などで,パイロクスマンガン石などの「ばらき」の系統のものは全く無かったと書いていました.
(研磨)色彩の美しいところを選って研磨をしました.以前に研磨した赤白チャートより磨り辛い感がしました.ほぼカリオピライトからなっているのに..どうして磨り辛いのかと思いながら磨っていました.割れ目に褐色のネオトス石が入っていて,振動でパシパシと割れて,小さな破片がたくさん出ました.機械研磨の場合,割れていくのは割れ目に入っているネオトス石の所為と判りました.振動にネオトス石が弱いようで,同じような例は,佐賀県唐津市にある厳木鉱山でもありました.こちらは炭マン・珪マン問わず割れ目に生成されているネオトス石から成形時に意としない方向へ割れてしまい,非常に成形の難しい石でした.
平滑にしたあとは粒度の細かいものに換えて再度研磨しました.比較的緻密で透明度のある部分にライトを当ててみました↓
手前で光が止まっていますが,塊状のマンガンの石ならこれが限界のようです.仕上げは初めに宮川の青砥で全体を刷り込むような感じでまんべんなく時間をかけて磨りました.ある程度まで光沢が出てきたら,鴨瀬谷山の砥石に換えて再度ゆっくり磨っていきました.
(以下 拡大写真です)
白色部は石英で,石英とカリオピライトの境界を囲むように入っている暗褐色部がネオトス石です.研磨中はこういうところから振動で割れていくのだと思います.
黄褐色部がカリオピライト,白色で白濁しているように見える部分は,延長の成形面の観察では菱マンガン鉱.脈の中央部の半透明の部分は石英でした.濃褐色部はネオトス石のようでした.
こちらは未研磨の面の拡大写真です.褐色部がカリオピライト,白色の脈が石英と菱マンガン鉱のようです.
当地からは菱マンガン鉱・石英・カリオピライト・ネオトス石のほかに,石墨・黄鉄鉱・緑マンガン鉱・赤鉄鉱・横須賀石・アフテンスク鉱・テフロ橄欖石などの鉱物が知られています.