いくつかの研磨した石 76
今回も2つ紹介します.
産地:岐阜県加茂郡川辺町上川辺 大乗鉱山西鉱床
二階を整理していたところ10年以上前に採集した,大乗鉱
山の層状マンガン鉱石が出てきました.
一部が褶曲になっていましたので一面研磨してみました.
石英やばら輝石の類が入っていないのを目視で確認してから,
一気に磨り上げました.硬い鉱物はほとんど入っていないので,
早く平滑になりました.
(研磨)合成砥石で一気に磨り上げました.そのあとに青砥で
中砥ぎして,鴨瀬谷山の砥石で仕上げしました.
褶曲の部分は左上で,後から切ったように見える,やや結晶の
粗い菱マンガン鉱脈に接しています.黒色部は炭素物質および,
酸化被膜です.赤褐色部はばら輝石を疑いましたが,一面研磨
した石のほかの石に同様の石がついていて,カリオピライトでした.
当初はヤコブス鉱が入っている層状の石と思っていましたが,
一面研磨すると,一部にしか入っていませんでした.図示した部分
の周辺にのみ磁石が引き寄せられました.
その2
産地:京都府舞鶴市栃葉 大俣鉱山
十数年前に原付バイクでウロウロしていた時に,訪問した鉱床で
跡地は残っているものの,鉱石らしいものは全く見た当たらなかった
鉱床のものです.在所に聴きこんで,やっとそれらしい石を一個だけ
見つけることができました.
文献によれば大正5年頃より開発され,同7年―8年頃が最盛期,
大正末期に一度休山したという.戦後の昭和35年頃より再開され,
昭和45年頃に閉山したという.
鉱床は舞鶴帯の堆積岩中に脈岩として挟まる流紋岩~安山岩質
岩中の鉱脈鉱床で,母岩は著しく変質している.
銅および亜鉛などを対象とした鉱山で,少量の金や銀も含んでいた
とのこと.
表面(一面研磨したのはこの裏面)
一個だけ見つかった石を標本サイズにしましたが,かなり座りが悪
いため,裏側を一面研磨してみることにしました.
(研磨)珪化しているためかなり硬いかと思いましたが,セリサイトなど
の粘土鉱物を相当混じっている所為か,思ったより早く平滑にできま
した.
石英と図示している部分に顕微鏡下でかなり細かい雲母を伴って
いました.これが多分,絹雲母だろう.母岩に含まれていた角閃石や
雲母は緑泥石に変質していて,鉄分の多いところは磁硫鉄鉱を伴っ
ていました.黄銅鉱は脈状になっていて,少量の石英を伴っていまし
た.