鉱物の顕微鏡写真23 ―ブラウン鉱―
産地:Kajilidong mine, Jhabua Manganese belt,
Jhabua district, Madhya Pradiesh, India.
(非売品)
Braunite ブラウン鉱
組成:MnMn6[O8|SiO4] 正方晶系
色:鋼灰色・黒色亜金属光沢.
比重:4.86
モース硬度:6-6.5
劈開:一方向に完全.
条痕:黒色
同質異像鉱物:なし.
蛍光:なし.
次はブラウン鉱にしようと思って,いろいろ
海外産の鉱物を大阪ショーなどで探していました
が,「案外無い」と云われ,言葉通り会場では
見つけられませんでした.
手持ちの古い標本の中に2つ海外のブラウン鉱
があったため,結晶が小さいですがこれで代用し
ました.
筆者がブラウン鉱を初めて採集したのは学生の
ころで,「まだ行ってへんの?」って言われて行った
吉兆鉱山の護法谷鉱床でした.赤色チャート中に
小さなレンズ状で入っているもので,単体のものなら
気づかなかっただろう.
さて,上の標本は元のラベルに「ウィンチ閃石Winchite」
と記載されたもので,のちに修正を加えました.
当地ではウィンチ閃石は産していないそうで,
青色や青紫色・赤紫色になった角閃石はマンガンの
多い苦土アルヴェゾン閃石(Magnesioarfvedsonite)と
のことだった.
顕微鏡写真.周りの白いところは石英.石英部は母岩との
境界当たりに,黒色の塊状ブラウン鉱がレンズ状をなして挟
まっている.石英の荒い部分に粒状のブラウン鉱がみられま
すが,かなり小さいものです.
もう一つの海外産は,
産地:Rakten, Rappland, Sweden.(K社で購入―非売品ー)
スウェーデン産のブラウン鉱です.
スカルンのような母岩に入っているもので,見た目黒色
塊状でパッとしませんが,黒色部がブラウン鉱です.
結晶をルーペで探しましたが,粒状のブラウン鉱が少し
見られる程度でした.
黒色粒状部がブラウン鉱です.
肉眼で鑑賞に耐えるものはやはり国産ものしか
出回っていないようで,国産ものを数点掲載します.
長崎県長崎市戸根鉱山のブラウン鉱です.学生のころの
採集品です.(非売品) 中央の大きな結晶は端から端まで
約5.5mm.初めて行ったときは博多から高速バスで長崎
まで行き,路線バスを乗り継いで行っていました.
長崎変成帯の結晶片岩中の層状マンガン鉱床でブラウン
鉱のほかホランド鉱やアルデンヌ石・サーサス石・紅簾石
などの鉱物を産しました.白色―淡褐色部は石英です.
産地:鹿児島県大島郡大和村大和鉱山のブラウン鉱.
(知人より土産として頂戴したものです)(非売品)
最近になってヴァナジウム鉱物が多産して話題になって
いた大和鉱山のブラウン鉱です.
「刻んだら何かでてくるかも?」
と言われましたが,標本箱に丁度の大きさなのでブラウン鉱
の標本にしました.本邦で始めに見つかったのが大和鉱山で
船を乗り継いで行ったときには,なぜか見つけられなかった.
ばら輝石とのちに桃井石榴石となる,緑色の石榴石を沢筋
で少し見たのみだった.あとはほとんど観光で,半日遊んで
とんぼ返りだった.
黒色部がブラウン鉱で,白色の鉱物の脈で切っています.
脈には赤色の粒や黄色の染みのようなものがみられますが,
細かい鉱物なので鑑定していません.
徳島県徳島市眉山のブラウン鉱です.(AO氏の石の花で購入,
京都科学標本で入手したとのこと―非売品―)
図鑑などで掲載のある有名な産地の標本ですが,流通量が
少ないのか,過去数回しか見たことがありませんでした.
三波川変成帯の紅簾石石英片岩中に脈をなすブラウン鉱で
石英と共存する様がはっきりと観察できるイイ標本です.
徳島は通り過ぎることが多く,この石を産する眉山も高速道
から眺める山になっています.
産地:京都府京都市右京区京北上弓削町足谷鉱山の
ブラウン鉱です.(購入したのか,採集したものかは
覚えてません ―非売品―)
赤色の塊状チャート中に挟まるブラウン鉱で,赤と黒の
コントラストが美しい標本です.現場は行ったことがあります
が,写真程度でした.石英と共存することが多いのですが,
こちらは,石英との間に褐色のカリオピライトを挟んでいます.
産地:京都府南丹市園部町船岡 大和谷鉱山のブラウン鉱
です.鉱山名は大阪管区鉱区一覧に掲載されていた名前を
使っています.コレクター間では船岡鉱山の名前が定着して
います.丹波Ⅱ型地層群の黒鉱鉱床ですが,最近になって
ブラウン鉱の産出が確認されました.
赤褐色―茶褐色の見た目あまりきれいでない塊状チャート
中に小さなレンズ状をなすもので,橙色のばら輝石系鉱物を
伴っているらしいのですが,上の標本には付いていませんで
した.
赤褐色―茶褐色の部分が母岩のチャート.艶の無い黒色部
が酸化被膜.