若狭では特に症状が出なかったのに、丹波帰ってくると再発した。
瀬崎の露頭の石を整理していると、曹灰長石の脈の風化部に細かい空隙が。倍率の高いルーペで覗くと無色の灰礬石榴石が空隙を覆っていた。風化部の断面に、赤色のスピネル(径約2㎜)と単斜輝石岩に濃集するクロム鉄鉱が入っているものがあった。
サイズは小さいが透明度の高い結晶に満足した。
丹後地方には、超塩基性岩がよく見られるが、クロム及び鉄イオン発色による緑色の石榴石をまだ見ていない。
東の延長部と思われる若狭大島半島の透輝石は、単斜輝石岩中の粗いもので、クロムイオンによる緑色のものがあった。
鉄イオンのものはくすんだ緑色で黄色っぽいものが多いが、クロムイオン発色のものは鮮やかな緑色のものがあるので、今まで収集の対象になっていた。
今日はその中から幾つか紹介したい。
全て、購入標本で灰鉄石榴石になるそうだ。上から高知県越知町上里,高知県本山町上関,高知県鏡村梅の木中の谷。
クロムを含有するともともと付いていたラベルには記載があったが、色だけではよく分からない。
通常の灰鉄石榴石は灰赤色・黄色~黄緑色・灰緑色などの色彩になり、緑色の鮮やかなものは少ないように思う。
上は甲武信鉱山の灰鉄石榴石。産状によって色彩が異なって来ることは分かるが、余りにも違いすぎる。
透明度はあまりないが、ガラス光沢が強い結晶群でお気に入りの標本だ。
クロムが鉄を置換すると灰クロム石榴石になる。灰クロム石榴石と呼ばれている各地の石榴石は、多くが含クロム灰礬石榴石あるいは含クロム灰鉄石榴石なのだと云う。
「石榴石1」で関東地方の灰クロム石榴石を掲載したが、本物の灰クロム石榴石だったのかは分からない。見た目の色で鑑定したようだが、ロジン岩様の母岩に着いたものなので、灰礬石榴石の可能性が高い。
こちらは北海道の八田クロム鉱山の灰クロム石榴石。八田鉱山のものは本物と云われている。黒色のクロム鉄鉱中に赤紫色の菫泥石を伴っている美しい標本だ。
昔、四国の東赤石山の赤石鉱山に行ったときに黒色のクロム鉄鉱に鮮やかな菫泥石とクロム透輝石の入った鉱石を採集したことをよく覚えている。石榴石は細かいものがあっただけと記憶していて、標本も残っていないから現場で選別から外れたようだ。
黒色のくすんだクロム鉄鉱もあって雲母を伴っているものもあったと、野帳には書いていた。このクロム鉄鉱中から愛媛閃石が見つかった。
この鉱物もエメラルドグリーンの美しい鉱物で、共存する透輝石とは見分けがつきにくい。
帰りに南の瀬場谷に下った際川原の転石に、エクロジャイトが多く見られた。変成度の高い岩石で、赤色の苦礬石榴石―鉄礬石榴石系鉱物とオムファス輝石-透輝石に少量の橄欖石を含んでいる。「ここでクロムを選別した」と書いていて、クロムからエクロジャイト採集に気が移ったようだ。
このときのエクロジャイトは標本がしっかり残っている。懐かしい標本だ。
最近は余り石榴石を探していないが、学生の頃はペグマタイトやスカルン鉱床によく行っていて、多くの産地で石榴石を見ていた。
結晶しているとかしていないとか余り関係なく探していたので、鑑賞に堪えるものは少ないが、もう少し続けていきたい。
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