石の話
ホタル石(Fluorite)
兵庫県西宮市越水 船坂峠南谷
(非売品)
Locality:Funasaka pass, Syakegohyama, Koshimizu, Nishinomiya city, Hyogo prefecture, Kinki region, Japan.
以前に石の話で当地の雑鉱を取り上げました.その続きで黄銅鉱が鉱染しているサンプルをリジェクトするか迷って,ひとまず塩酸にしばらく浸けてみてから考えようとしました.10分くらい希塩酸で処理したところ,表面の一部についていた黄白色の粘土のような部分が,束子での水洗いでだいだいが取れてくれました.
水に濡れている状態でも表面がキラキラしているため,ルーペで観察したところ,銀白色金属光沢の部分は硫砒鉄鉱,淡い真鍮色金属光沢粒状は黄鉄鉱,黄銅色金属光沢で不定形塊状の黄銅鉱がそれぞれ含まれていました.
その集合の一部に紫色のホタル石が粒状で見え,リジェクトせずに標本として残すことにしました.
75㎜×60㎜×20㎜の黒箱に入るか入らないかくらいの大きさで中途半端に大きいので,真ん中に斫りハンマーを宛てて真ん中から半分に割りました.
成形し周囲を掃除してラベルを付けました.その際に顕微鏡下で観察し以下の画像を撮影しましたので,掲載します.
黄鉄鉱・黄銅鉱・硫砒鉄鉱などの集合.端の方に紫色のホタル石が見えている.
黄銅鉱の多い部分.黄銅色金属光沢:黄銅鉱.淡い真鍮色金属光沢部が黄鉄鉱.赤紫色:ホタル石.
斑状になったホタル石の多い部分の拡大.黄銅鉱よりホタル石と同じ結晶系の黄鉄鉱のほうが量的に多いようだ.
粒状になっている部分の拡大.さわやかな紫色で色も濃い.こういうのは紫外線で蛍光しないことが多く,この石も紫色の部分以外のところは蛍光しましたが,色の濃い部分は蛍光しませんでした.
当地より東方に船坂鉱山が尾根筋にあり,その鉱山のひ(金偏に通)先なのかもしれない.それ以降は探索に行けていませんが,船坂峠の周囲に同じような鉱床がいくつかあることが知られていて,その一つかもしれません.