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鉱物の顕微鏡写真198 ―シュツルンツ石―

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顕微鏡写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉱物の顕微鏡写真198

―シュツルンツ石―

 

 

産地:Sítio do Castero mine, Folgosinho, Guarda, Portugal.(非売品)

 

 


Strunzite  シュツルンツ石

[組成]      Mn2+Fe3+2[OH|PO4]2・6H2O

[結晶・形態]   自形結晶は断面が長方形に近い角柱状・板状・板柱状.

                     結晶の頭がナイフの刃先のような形状.結晶が微細なた

                     め針状に見える.双晶が知られている.柱面に平行に条

                     線があるものがある.結晶およびその集合は脆い.

                     蝶ネクタイ型・繊維状・放射状・毛状・皮膜状集合などになる.

[色]       無色・白色・灰白色・灰色・淡黄色・灰黄色・黄色・暗黄褐色

                    ・淡褐色・褐黄色・淡紅色・赤橙色・橙色・赤褐色.赤系の色

                    のものは表面に不純物が付着してそう見えるものがある.

[光沢]      ガラス光沢~絹糸光沢.油脂光沢など.透明―半透明.

[モース硬度]  4

[比重]      2.49~2.52

[劈開]      1方向に明瞭という資料と,観察無しという資料がある.

[条痕]      白色.

[名称]      鉱物分類のシュツルンツクラスを作成したドイツの鉱物学者

          Karl Hugo Strunz(1910-2006)に因む.

[原産地]    Hagendorf Sounth pegmatite, Hagendorf, Upper Palatinate, 

                    Bavaria, Germany.

 


 

 

ひさびさの顕微鏡写真シリーズです.今回はシュツルンツ石にしました.マンガンと鉄の含水リン酸塩鉱物で本邦からも発見されています.

 

 上の標本は今年の大阪ショーで購入した標本で一面がフォスフォシデライトの青紫色で一部にストレング石の赤紫色,黒色の横須賀石を伴った視覚的にインパクトのある標本でした.ひさびさに衝動買いをしました.そのほか数点を仕入れました.

 標本の大部分を占める部分が青紫色ブドウ状のフォスフォシデライトで,その上に被っているのか赤紫色のストレング石が付いていました.サーモンピンクのトリプル石も付いていて,黒色金属光沢で塊状の横須賀石が隙間に充填する感じで挟まっていました.

 その一部に麦わら色の細かな針状結晶が一面に付いている部分があって,顕微鏡で観察したところシュツルンツ石でした.橙色粒状のラウエ石を伴っていて,いつか顕微鏡写真シリーズに使用できそうなので,顕微鏡撮影していました.産地名の町の名前は当初なんと読めばいいのか判らず,グーグルマップで確認したところフォルゴジーニョと読むようです.資料ではペグマタイトのようなことがありましたが,もともとタングステンや珪石を狙ったようですので,熱水の作用での生成かもしれません.

 

 もう一つ海外産のものを.

産地:Palermo No.1 mine, Groton, Grafton county, New Hampshire, USA.(非売品)

 

 こちらも今年の大阪ショーで購入した標本です.リン酸塩鉱物は割と好きで,二次鉱物としての産出が多い中で,初成鉱物としての産出や生体鉱物としての産出もあって産状がかなり広く,サイズは小さいものの種類が多いので面白いため,ずいぶん前から蒐めています.

 上の標本はペグマタイトからのもので古くは雲母や長石や珪石を稼業したらしく,現在は鉱物標本用に稼業している鉱山とのことでした.

 

 母岩の淡褐色の部分は長石や石英などではなく菱鉄鉱で,その結晶の表面にリン酸塩鉱物の微細な華が咲いている感じです.元ラベルに記載があった鉱物名はJahnsite-CaMnFeとStrunziteの2種で,前者は"Very small"と注意書きがしてありました.

 顕微鏡写真シリーズで画像を使用するために,撮影用としてその部位を探していたところ,結晶の頭とその集合の形状から,赤褐色―橙色で剣先のような板状結晶をするのがJahnsite-CaMnFeと判りました.

 シュツルンツ石は針状の形状で結晶の頭がナイフの刃先状をしているので気づきました.いずれも双眼顕微鏡で思い切り拡大して,カメラのズームで倍率を上げないと確認できないような小さな鉱物でした.

 色は黄橙色~黄色で白色板状の鉱物の上に乗っかったり,刺さったような感じで付いていました.

 

 シュツルンツ石の土台になっている鉱物は何だろうかと思っていたところ,無色―白色板状でロゼット状の集合が球状に集まったものでそれに合致するものを探したところメッセル石でした.メッセル石はカルシウムを含む鉄のリン酸塩鉱物で,鉄はJahnite-CaMnFeとシュツルンツ石とともに共通しているのですが,カルシウムはどこに..と思っていたら母岩となっている菱鉄鉱は炭酸鉄の鉱物ですが,ある程度カルシウムは含むので,あってもおかしくないと思う.

 

 

 

 次に国産のシュツルンツ石です.前出の標本はペグマタイトと熱水?からのものでしたが,本邦からのシュツルンツ石は粘土中の藍鉄鉱ノジュールからの産出です.

 

産地:兵庫県神戸市西区平野町堅田(非売品).

 

 藍鉄鉱ノジュールです.知人より提供していただきました.藍鉄鉱本体は加水分解して仮晶のような形になっていて,赤褐色や黄褐色の部分はサンタバーバラ石(かつてケルシェナイトと呼ばれた)で占められています.球体の内部は空洞になっていて,藍鉄鉱仮晶の結晶の表面に黒色のロックブリッジ石やリプスクーム石などの鉄のリン酸塩鉱物が被覆しています.この現場では両者は一緒に出てくることが多いので,どちらか判別するのが難しいのですが,提供していただいた方は,顕微鏡で細かく見ていくと結晶の形から,両者を分別できると仰っていました.

 さて,シュツルンツ石ですが,かなり小さいので上の画像では確認し辛い.

かなり拡大したところ,ようやくシュツルンツ石が確認できました.黄色―黄褐色で一部が白っぽく,光沢がやや強い印象でした.

 

別の部位の拡大.下地のなっているのはロックブリッジ石か?

 

 見た目は黒っぽくてもロックブリッジ石以外に普通の二酸化マンガンの煤のような物質は含まれているらしく,軽く過酸化水素で洗ったところ,発泡しました.

結晶の頭が出ているところを画像にしたくて,いろいろな部位を観察してようやく,一枚だけ結晶の頭を確認できるサイズのものを見つけて撮影しました.ナイフの刃先のような形状の頭が観察できました.

 

 

 

 


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