顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真179
―苦土橄欖石―
産地:Spat Gali, Naran-Kaghom valley,, Mansehra district, Khyber Pakhtanwa,
Pakistan.(非売品).
Forsterite 苦土橄欖石(苦土かんらん石)
[組成] Mg2+2[SiO4] or (Mg2+,Fe)2[SiO4]
[結晶] 直方晶系.自形結晶は柱面と庇面からなる柱状
になる.ノジュール状や塊状集合になる.結晶
は脆い.実際は粒状で見かけることが多い.
[色] 無色・白色・灰白色・灰色・淡黄色・淡緑色・黄緑
色・緑色・灰緑色・暗灰緑色・黄褐色・朱赤色・橙
色・赤褐色など.
[光沢] ガラス光沢.塊状のものは油脂光沢になってい
るものがある.
[モース硬度] 7
[比重] 3.27~3.3
[劈開] ほとんど無し.か{100}に不完全.裂開が観察
されることがある.
[条痕] 白色.
[酸による反応] 分解してゲル状物質を残す.
[原産地] Monte Somma, Somma-Vesuvius complex,
Naples Campania, Italy.
[名称] 古代より知られていて,いろいろな名称がつけら
れたが,1827年にAdolarius Jacob Forster
に敬意を表してつけられた.系列名のオリビンは
オリーブのことで,和名の橄欖とは全く別の植物.
日本にはオリーブが無いので,それに似た橄欖
が旧幕時代に誤訳されて今に伝わったもの.
[同質異像鉱物] Wadsleyite, Ringwoodite, Poirierite.
[用途] 美しい緑色のものは「ペリドット」と称し宝飾利用
される.ほかに耐火物・骨材などに利用される.
ダンダス石の次は苦土橄欖石にしました.
造岩鉱物として広く普通に産し,火山岩・超塩基性岩・苦灰石起源のスカルン・隕石中に産します.野外でサンプリングしてきた岩石によくみられる鉱物なので,掲載しました.
上の標本は市場によく出回っている苦土橄欖石の結晶で,元ラベルに黒色の針状結晶をなすルドウィヒ石が入っているようなことがあって,購入した標本です.
以下国産の標本です.
産地:佐賀県唐津市新木場.(非売品).
筆者が学生の頃に訪問してサンプリングした標本です.灰色でやや緻密なアルカリ玄武岩中のもので,白色ないし淡桃色の木村石の中に入っていました.画像の下の方に板状のネオジムランタン石を伴っていて,太陽光下で観察すると,コントラストが非常に良かったです.
産地:佐賀県唐津市高島.(非売品).
こちらも学生時代の蒐集品です.小さい島なので,干潮の時間に一周したところ玄武岩中にゼノリスとして挟まった苦土橄欖石がたくさん見られました.石だけでなく海産物もいろいろあっていいところなのでおすすめの場所です.この橄欖石はマントル上部からのものだとか.ほかに鉄スピネルを伴っています.
産地:佐賀県多久市鬼ヶ鼻山.(非売品).
研磨石シリーズで掲載した鬼ヶ鼻山の苦土橄欖石です.
産地:兵庫県豊岡市日高町畳滝の下(非売品).
渇水の時に訪問してただの壁になっていた畳滝の下流をぶらぶらしているときに転石中よりサンプリングしました.このあたりの玄武岩は色が黒っぽく緻密で斑晶があるものが少ないようで,この石だけ灰色に近く,石基の部分が多少粗かいため,目立ち,小さいものですがサンプリングしました.直径2㎜前後の肉眼でもわかるような大きさの橄欖石が含まれていて,ほかに少量の輝石類を含んでいました.
産地:青森県東津軽郡外ヶ浜町三厩 青函トンネル内(非売品).
知人よりお土産として頂戴した標本です.母岩は乳白色でやや粒の粗い安山岩で,ちょっと風化した部分に浮き出ている黒っぽい鉱物があって,拡大したところ苦土橄欖石でした.
産地:福岡県田川郡添田町豊前坊(非売品).
学生の頃にサンプリングした標本です.学生の頃,日田彦山線で彦山駅で下車し,バス賃をケチって駅から銅鳥居を経て英彦山に登ったとき,豊前坊に下りました.町営バスの時刻まで1時間ちょいあったので,東隣の鷹巣山方面に少しブラブラしていました.道路は国道500号線で,脇に白い砂がたくさんたまっていたので,詳しく見ていたところ細かい橄欖石がたまっているところがありました.橄欖石の多い部分を手ですくい,あまりにもとりづらいので,現在では死語になっているテレカで掬って採取しました.近くに母岩もあってかなり風化しているものの肉眼で見えるような橄欖石がありましたので,これをサンプリングしました.小石サイズで,ラベルも豊前坊としか書いていなかった,箱はタバコの箱を改造して作ったもので,巻いているテープで半腐れになっていました.これを掃除した際に撮影しました.母岩は安山岩質の岩石です.
産地:京都府与謝郡伊根町新井崎(非売品).
以前に研磨したときにノジュール状として挟まっていた苦土橄欖石です.母岩は安山岩で,ほかの空隙に菱鉄鉱を含んでいました.
産地:岡山県津山市戸脇・桑下 糘塚.(非売品).
マントルと地殻の境界付近にあるといわれているリンバーグ岩中に挟まっている苦土橄欖石です.知人よりサンプルとして頂戴しました.黒色―灰黒色でやや緻密な玄武岩質岩に最大径10㎜の肉眼的な大きさの苦土橄欖石が含まれていました.
産地:静岡県静岡市葵区美和高山.(非売品).
ピクライト質玄武岩の産地として知られているそうです.購入したあとに母岩が少々大きいサイズでしたので,成形をかけたところ木っ端になった部分から上の結晶面の観察できる苦土橄欖石が含まれていました.この木っ端を結晶が打撃の振動で取れないように留意しながら成形して,苦土橄欖石の標本にしました.もう一つは岩石標本にしています.
産地:愛媛県新居浜市別子山保土野保土野谷.(非売品).
橄欖岩の産出で有名な現場です.川原の転石からなるべく橄欖石だけからなる集合を探してサンプリングした一部です.肉眼的に橄欖石だけだと思っていましたが,深い菫色の菫泥石を伴っていました.
産地:岐阜県揖斐郡揖斐川町春日 春日ドロマイト鉱山(非売品).
ドロマイトスカルンで有名な産地の苦土橄欖石です.白色部は炭酸塩で上の方にある黒っぽい筋の部分に含まれています.橙色の粒状の鉱物は単斜ヒューム石.